真なる封印と、古代の遺跡へ
翌朝。
アヴァレル鉱区の封鎖が一時解除され、フィーネとサティはヴァイス将校と共に深層調査に乗り出していた。
魔影が現れた最奥部、そのさらに奥――
かつて“崩落のため立入禁止”とされた閉ざされた坑道があった。
「……これは……?」
瓦礫の奥に隠されていたのは、巨大な石扉。
地中深くにありながら、扉の表面は削れひとつなく、そこには古代語でこう刻まれていた。
> 『その剣、境界を断ち その血、契約を結ぶ』
――《エンメル騎士団》、最後の封印区域
「エンメル……?」
フィーネが目を見開く。
それは彼女が幼少期に読んだ、古代史の中にしか出てこない名前――
“異界門の大災厄”を封じ、歴史から姿を消したと言われる伝説の騎士団。
「その名前、今はほとんど記録に残ってない……たしか、異界との接触に関わった唯一の騎士団よね」
サティも声を潜める。
「まさか、その封印がこのパステコに……!」
***
ヴァイス将校が扉を調べるが、開ける術はない。ただ一つ、中央に浮かぶ“剣型の刻印”だけが反応していた。
「この模様……フィーネの刻印と一致している……?」
「試してみる」
フィーネが右手を扉にかざす。
すると扉の紋が共鳴し、淡く輝く。
数百年の封印が、微かに軋む音と共に、開き始めた。
ギギィ――ン……
扉の向こうにあったのは、石造りの大空間。
その中央には、一本の剣が“宙に浮いたまま”封印されていた。
「……あれは……」
フィーネの中で、何かが震える。
> 『これは、君に返すべきものだ――かつて、お前が失った“記憶”と共に』
再び、誰かの“声”が脳内に響いた。
「フィーネ、下がって! これは、ただの遺物じゃない!」
サティが魔力を構えた瞬間。
──ズンッ!
空間全体が震え、天井に浮かんだ魔術紋が発動。大量の魔力が“剣”に集まり、封印が一気に解放される。
> 「来る――!」
フィーネが剣に手を伸ばした瞬間、
彼女の“刻印”が完全に発光する。
ズアアアアアアァァァン……!
そして光の奔流の中で、フィーネの視界が暗転した。
***
気がつけば、そこは何もない虚空。
ただ一人、彼女の前に立っていたのは――
かつての《エンメル騎士団》の団長を名乗る男だった。
> 「ようやく目覚めたか。我が“後継の器”よ――」




