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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第9章 黒霧編

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戻りゆく日々、始まりの鐘

「え、ここが……私の席?」


エイル・セラフィーナは目を見開いた。


彼女が案内された教室の一角――窓際の席には、すでに新しい教科書と制服がきちんと用意されていた。


「そうよ。今日から、あなたは正式な学院の生徒。だからちゃんと通ってもらうわ」

と、言ったのはサティ。


本来ならギルドの仕事が山ほどある彼女が、今日はわざわざ朝から同行していた。


「……うん。ありがとう、サティさん」


エイルは小さく笑った。


どこか幼さの残るその表情は、もう“あの黒霧の中にいた少女”ではなかった。



***


一方、学院の裏庭。


剣聖フィーネは、久しぶりに“誰もいない中庭”で剣を振っていた。


シュッ、シュッ――。

無駄のない動き。風すら切り裂くような鋭さ。


「もう少し、肩を落として」


声をかけたのはサティだった。

朝の仕事を終え、ふらりと庭へ立ち寄ったらしい。


「剣の構え、変わった?」


「ちょっとね。あの霧との戦いで、自分の甘さを痛感したから」


「でも、ちゃんと守ったじゃない。少女も、街も」


「それでも、私が少しでも迷っていたら……あの子は戻れなかったかもしれない」


サティはため息をついてから、静かに言った。


「だったら、これから何度でも立て直せばいい。そういう仕事でしょ、受付嬢も、剣聖も」


「ふふ……そうね」


少しの沈黙のあと、フィーネは剣を納めた。


「サティ、ありがとう。あなたがいてくれるだけで、私はだいぶ助けられてる」


「そう言ってもらえると、張り合いあるわ」


ふたりは、青空の下で微笑みを交わした。



***


学院では、鐘の音が響いていた。

新たな講義の始まりを告げる、やさしい音色。


「……ここが、私の居場所なんだ」


エイルは教室の窓から空を見上げる。


あの霧も、あの鏡も――

もしかしたら、まだすべてが終わったわけじゃないかもしれない。


それでも、今はここにいる。

彼女自身の足で、仲間たちと共に、前を向いて歩き出せる場所に。



***


その頃、ギルドの地下では――


「……これが、鏡の破片か」


サティが保管庫の奥で手にした小さな黒欠片は、わずかに“脈打って”いた。


> 「終わったとは、まだ言えないのかもね――」




静かにそう呟くサティの瞳には、既に次なる決意が灯っていた。

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