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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第9章 黒霧編

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鏡の主と、少女の願い

「――壊してみせてよ、《剣聖》フィーネ」


黒霧をまとう異形は、まさに人の形を模した“模造体”。


その背には黒く歪んだ羽、顔には仮面のような霧。


そして全身からあふれるのは、まぎれもない“エイルの魔力”。


(……この存在、エイルの心と融合してる?)


鏡の中の何者かが、エイルを“依代”にして形を得た。


そして今、フィーネの前に立ちはだかっている。


「第二式・雷閃」


その一閃で、霧の鎧が弾ける。


だが霧の主は再生する。まるで“感情”が形を保っているかのように。


「どうして壊すの……!」


「どうして! せっかく“特別”になれたのに!」


「誰かに、覚えていてほしかっただけなのに――!」


叫びが、霧に反響する。


それは――


「……エイルの、声?」


霧の主は、エイル自身だった。


彼女の恐れ、孤独、焦がれるような承認欲求が、鏡の力を引き寄せ、“異形”として形になった。


(そうか……あれは、彼女の“心の影”)



***


「聞いて、エイル!」


フィーネは叫ぶ。

剣を構えながらも、鋭い視線で“少女”の心を見据えていた。


「あなたの力は、本来こんな使い方をするものじゃない!」


「うるさいっ! 剣の人に何が分かるの! 私が、どれだけ……!」


再び霧が暴走する。

その中心で、エイルの身体が苦しげに揺れる。


「――助けて……!」


微かに、少女の“本音”が漏れた。


フィーネは駆ける。

剣を収め、腕を伸ばす。


「エイル、あなたの手を、掴ませて!!」


爆ぜる霧の中、フィーネの手がエイルの手を掴む

――その瞬間、黒鏡が割れた。


パァンッ――!


響く破砕音。

周囲を包んでいた霧が、一気に崩れ落ちる。



***


霧が消えた場所に残っていたのは、少女――エイルだけだった。


彼女はフィーネに抱き留められ、涙をこぼしていた。


「ごめんなさい……怖かったの。普通に生きて、普通に学んで、それだけじゃ“何者にもなれない”気がして……」


「あなたは、あなたでいい。誰かのようになる必要なんてない」


フィーネの声は、優しかった。



***


数時間後。

黒霧区の中心から“黒鏡”は完全に消失し、霧も霧核反応も止まった。


封印は意味を失い、代わりに静寂と魔力の浄化反応が残された。


サティが後処理のために駆けつけた頃には、フィーネとエイルが寄り添って座っていた。


「お疲れ様、フィーネ」


「ええ、ちょっと疲れたけど……大丈夫」


サティは頷きながら、破片を拾い上げる。

それは、黒鏡の“枠”の残骸だった。


「やっぱり、あの鏡……異界と繋がってたのかもね」


「でも、もう終わったわ」

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