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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第9章 黒霧編

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剣と霧、封じられた旧都へ

「これが……霧に対抗するための装備ね?」


フィーネが手にしたのは、黒い革製のリストバンド。

サティがギルド内の工作班に作らせた、特注の【霧干渉遮断装置】だ。


「霧の中では魔力が歪む。これは、その暴走を防ぐための装置よ。あと、これも持っていって」


サティが手渡したのは、【黒霧共鳴石】。

特定の霧の密度に反応して光る装置だ。


「エイルが霧に取り込まれているなら、必ず近くで反応するはずよ」


「分かった」


フィーネは短く頷くと、腰の剣に手を添えた。


その瞳に一片の迷いもない。



***


黒霧区。

ルメリア北端、封鎖された旧市街地。

高い柵と封印の紋章が刻まれた石門を超え、彼女は禁域に足を踏み入れた。


「……空気が重い」


入った瞬間、肌にまとわりつくような圧迫感。

魔力の濃度が異常だ。まるで、空気が“魔法”そのものになったかのような感覚。


足元にはひび割れた石畳。崩れかけた建物。

そして、その奥から――霧が、ゆっくりと“生えて”いた。


「こっちね」


フィーネは共鳴石の反応を頼りに、かつて学院だった場所の裏庭へと進む。


その途中、彼女は“気配”を感じ取った。


(……来た)


一歩踏み出した瞬間。霧が裂けるように左右に揺れ、

その中から“人の形をした何か”が現れた。


「《黒喰い》……!」


顔がない。腕が長すぎる。

そして、その体の中心には“人間の瞳”が浮かんでいた。


「退きなさい。……今は、戦う気はないの」


フィーネが声をかけても、それは喉を鳴らすような唸り声を上げて迫ってくる。


ズシャッ――!


応じたのは、一閃の風。


フィーネの剣が“間合いよりも先”に斬り裂き、黒喰いの身体を貫いた。


「……道を、開けて」


霧がまた一つ後退した。

彼女は再び、奥へと進んでいく。



***


数分後、辿り着いたのは――“黒の鏡”の前。


そこには、少女が立っていた。

霧に包まれながら、まるで人形のように静かに。


「……エイル」


「こんにちは、《剣聖》様」


その声は、柔らかかった。

だが瞳に宿る光は、人ではなかった。


「ここが私の“世界”よ。どう? 綺麗でしょ?」


「戻りましょう、エイル。あなたは、こんな場所にいてはいけない」


「でも私はここで目覚めたの。ずっと眠っていた魔力も、心も。全部、この鏡が教えてくれたのよ」


「……操られてるの?」


「違う。私は“選ばれた”の。試してあげる。《剣聖》って、本当に最強なのか」


――バチッ。


次の瞬間、エイルの背後から魔力が走った。


黒霧をまとうように、彼女の身体が変質していく。

“黒の使い魔”が彼女の影から這い出し、空間が歪んだ。


「さぁ、私と“試練”を踊って? 剣の人」

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