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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第4章 パレード編

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死神の導き、来訪者たち

パレードの開催が近づき、王国全体が浮き足立つ中。

サティ・フライデーは、静かに準備を整えていた。


ハイドからの召集から数日。

ついに《剣聖》と《聖女》を迎える時が来た。


「さて、そろそろ転移するか」

サティは腰に手を当てて、小さく息をつく。集合場所は国境。《剣聖》の到着予定地点だ。


王都の空気を後にし、魔法陣を描いて一言――「転移」。


眩い光の中、彼女はクラウン王国の外れ、国境近くの小道に立っていた。草木のざわめきが耳に心地良い。


「さて、そろそろ来るかな……」


しばし待つと、遠くから馬車の車輪音が近づいてくる。風に巻かれた砂埃とともに、一台の馬車が静かに止まった。


「あなたが《死神》ですか?」

馬車から降りた護衛の騎士が尋ねる。


「はい。そうです」

(……やっぱり、他の国の人にも“死神”って呼ばれてるのね)


馬車の扉が開き、中から銀髪の騎士服の少女が姿を現す。


「《剣聖》のフィーネ・カステンです。よろしくお願いします」

気品を帯びた立ち姿と、引き締まった眼差し。


「サティ・フライデーです。こちらこそ、よろしくお願いします」


護衛の者に軽く一礼し、サティは続けた。


「それでは、フィーネ様。次は《聖女》を迎えに行きましょう」


「はい、お願いします」


サティはフィーネの手をそっと握り、魔力を流し込む。


「――転移」


次の瞬間、2人はパルナコルア信仰国との国境付近に移動していた。


「……あっという間に着いたね」


「『転移』したからね」

サティが肩をすくめると、フィーネは微笑んだ。


そこへ、再び馬車が姿を現す。


「あなたが《剣聖》様ですね?」

車内から、ふわりと金色の髪を揺らす少女が顔をのぞかせた。

白を基調とした法衣と、穏やかで神聖な微笑み。


「そうだけど、君は?」


「申し遅れました。私は《聖女》、ルア・シエンと申します」


「君が……!」

フィーネが目を見開く。聖女というより、どこか普通の少女のような柔らかさ。


「そして、そちらの方は?」


「クラウン王国からお二人をご案内する者です。よろしくお願いします」

サティは穏やかに応じる。


だが、フィーネがいたずらっぽく聞いた。


「なあサティ、ルアには“あの二つ名”言わないの?」


「物騒な名を知ってるのは少ない方がいいから」


「でも、私……知っていますよ。あなたが《死神》だって」


「……ルアは、どうして?」


「クラウン王国の《死神》。あなたの噂は他国にも届いています。実際にお会いできるなんて光栄です」


(……この分だと、知らない国の方が少なそうね)


と、サティは内心ため息をついた。


「さて、そろそろ移動しましょう。今日は私の領地・ルメリアに泊まってもらいます。明日、王都へ向かうから」


近くの馬車を借り、三人はルメリアへと向かう。



「ここが……あなたの領地?」


到着後、馬車の扉を開けたフィーネとルアは、街の景色を眺めてしばし沈黙した。


整備途中の石畳、立ち並ぶ建設中の建物、所々に残る崩れかけの塀。


「綺麗に片付いてなくてごめんね。叙爵されたばかりだから、まだ整備も行き届いてないの。今、住民たちと協力して良い街にしようとしているところだから」


サティが少し気恥ずかしそうに言うと、ルアが首を振った。


「いえ。理想を目指して進んでいる街には、何よりも価値があります」


「完成したら、また招待してくださいね」


「私も行くよ!」

フィーネもすぐに続いた。


サティは頷いて、にこりと笑った。


「もちろん。あの時よりももっと素敵になったルメリアに、2人を招待するわ。その時は、招待状をちゃんと届けるから」


その夜、《剣聖》と《聖女》はサティの領地に滞在し、静かに、そして少しだけ騒がしく、旅の疲れを癒していった。


それが、後の大事件の幕開けになるとは、この時のサティはまだ知らない――。

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