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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第4章 パレード編

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サティ・フライデー、ルメリアに立つ

「ここが……私の統括する街か」


竜車の扉を開け、眩しい日差しの中へと足を踏み出すと、広がっていたのは巨大な石壁に囲まれた都市――ルメリア。サティ・フライデーは肩にかかる陽射しを振り払うように帽子を直し、城門を見上げた。


彼女の隣では従者であるメイド、メイランが慌ただしく荷物を整えている。


「ユリアスの街、どんなところなんだろうって思ってたけど……実際は想像以上に大きいわね」


竜車の中では、サティの思考は先日の叙爵式の記憶に巻き戻っていた――。



* * *


『サティ・フライデー。お前が納める領地は――ユリアスとする』


『承りました。納めさせていただきます』


貴族たちの間にざわめきが走った。


『ルメリアか』


『あんな小娘にあの街を納められるのか?』


『我々貴族を目の敵にしている戦士や冒険者の成れの果てか』


『逃げ出さないといいけどな……』


『静粛に!』と宰相が一喝し、その場を締めたあと、王は微笑みながらこう続けた。


『これにて解散とする。サティはこの後、応接室に来るように』


『分かりました』


後に応接室で、王から改めて言い渡されたのだ。


『お前は今より男爵となり、サティ・フライデー・ルメリアと名乗るように』


『分かりました』


『ただし、叙爵したからといって王家専属冒険者であることに変わりはない。受付嬢の仕事も異動として処理しておく』


王妃ソフィアとユーリシアもその場に同席していた。


『今度、遊びに行くわね。あなたの街に』


『是非、お越しください』



* * *


「ご主人様、起きてください。着きましたよ」


メイランの声で思考を現実に引き戻され、サティは竜車から降り、ルメリアの石畳を踏みしめた。


門の前では門番が立ちはだかる。


「身分証をご提示ください」


「これです」サティが王家の印が刻まれた小刀を見せると、門番の顔色が変わった。


「こ、これは……失礼しました!まさか《壱級冒険者》でいらっしゃるとは……。どうぞ、お通りください!」


「ありがとう。この娘は私の従者だから、一緒に通してあげて」


門をくぐり、まず向かったのは冒険者ギルド。石造りの荘厳な建物の扉を押し開けると、すぐに一人の男が声をかけてきた。


「ようこそ冒険者ギルドルメリア支部へ。異動してきた受付嬢ですね?」


「はい。サティ・フライデーと申します」


「私はギルマスターのモルライト。ハイド様からの連絡、確かに受け取っております。こちらこそ、よろしくお願いします」


「ありがとうございます。ところで……この街の領主屋敷の場所、ご存じですか?」


「領主様にご挨拶ですか? ……残念ですが、この街には現在領主が不在でして」


「知っています。だから私が任命されたんです」


モルライトは一瞬呆けた顔を見せたが、すぐに顔を引き締めた。


「……あなたが、領主?」


「ええ、元は受付嬢でしたが、叙爵を受けてこの街の統治を任されることになりました」


「それは……驚きました。では、ご案内しましょう。領主屋敷まで」


「ありがとう。助かります」


サティは彼のあとに続きながら、巨大な街ルメリアを見渡した。活気に満ちてはいるが、どこか荒んだ空気も漂っている。かつての混乱か、それとも現在も何かが燻っているのか。


(ここが、私の街。これからこのルメリアを、私が守っていくんだ)


サティの新たな戦いが、ここから始まる――。

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