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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第3章 王女護衛編

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叙爵と王妃の紅茶

「王様、サティと名乗る冒険者が城門前に到着しております」


「通せ。今後その者が訪れた際は検査は不要と、門番全員に通達しておけ」


「かしこまりました」


王都の守護隊──通称・門番──へ即座に伝令が飛び、サティ・フライデーという冒険者は、王都において“例外”の存在となった。



* * *


「失礼します」


「そんなにかしこまらなくていいぞ」


「そうはいきませんよ、陛下。それで……本日は、どのようなご用件でしょうか?」


サティは礼を崩さず、凛とした声で問いかけた。


「うむ。早速本題に入るが、サティ。お前を叙爵することにした」


「……そうですか、私が……」


受け答えの途中で、思考が追いついていないことに気づく。


「……すみません。陛下も、冗談を仰るのですね」


「誰も冗談など言ってはおらん」


「……え?」


沈黙の後に、現実が追いついてきた。


「では……私が、叙爵されるというのは……事実、なのですか?」


「そうだ。ギルド総督、戦士長からの報告も届いておる。単独でダンジョンを攻略したことも、“変化”の力を持つことも、すべて把握している」


「……まさか、そこまで知られていたなんて」


「ユーリシアは、実に優秀な人物を選んだようだな」


その一言で、サティは覚悟を決めた。


「……分かりました。姫様の護衛である以上、それなりの身分も必要でしょうし、貴族になります」


「感謝する。叙爵式は改めて催す。その連絡を待っていてくれ」


「かしこまりました」



* * *


応接室を出て、案内された部屋──ユーリシアの隣室に入ると、しばらくして扉がノックされた。


「サティさんの部屋かしら?」


その声は、ユーリシアのものではなかった。扉を開けると、そこにいたのは優雅な立ち姿の女性。


「王妃様……でしたか」


「よく分かったわね。ソフィアよ」


「ご用でしょうか?」


「用がなきゃ来ちゃいけないの?」


「い、いえ、そんなことありません!」


「ならよかったわ。ユーリシアの護衛を引き受けてくれて、ありがとう」


「もったいないお言葉です」


「それでね──今日は、お茶会に来てほしいの」


サティは内心、焦った。王妃とお茶会だなんて、どんな噂になるか分からない。ここは考える必要があった。


「分かりました。ですが……ソフィア様の“娘”として参加させていただいても?」


「ふふ、いいわよ。面白い遊びになりそう」



* * *


ところが。


「あなた、ユーリシアじゃないわね?」


「……お母様、何をおっしゃって」


「ユーリシアはね、いくら誘ってもお茶会には一度も来ないのよ」


――完全に見破られていた。


「……すみません。私です。サティです」


「やっぱり。でも安心して。お茶会のメンバーは、私とあなただけよ」


「え、そうなんですか?」


「さあ、着いてきなさい」


案内された部屋には、既にティーセットやお菓子が並べられていた。


「これだけ用意するのに、時間かかるはずですよね?」


「朝から準備させていたの」


「私が断っていたら……?」


「“もし”の話は無粋よ」


「……ですよね」



* * *


お茶会のあと、王妃はサティを庭園に誘った。


「ここ、綺麗ですね……」


「自慢の庭なの。次はね、第一王女に会ってもらいたいの。きっとあなたと気が合うわ」


「はい、私でよければ」


「ありがと。さ、今日はゆっくりお休みなさい」



* * *


翌朝、朝食を終えたサティの元に、1人のメイドが現れた。


「このたび、陛下より命を受け、サティ様の専属メイドとなりました。メイランと申します。よろしくお願いいたします」


「……こちらこそ、よろしくね」


「それと、陛下がお呼びです。叙爵式にてお待ちです」


サティはメイランの案内で、玉座の間へと足を運んだ。



* * *


「サティ・フライデー、入られよ」


宰相の声が響き、サティは前へ進む。そして片膝をついて、頭を垂れる。


「頭を上げよ」


「ありがとうございます」


「この度、皆の者を招集したのは、この者・サティを叙爵するためである」


その瞬間、貴族のひとりが前へ出た。


「お待ちください、陛下!」


「ファルメル子爵、何事か?」


「この者に爵位を与えるのは、時期尚早かと」


賛同の声がいくつか上がる中、王は静かに言った。


「ならば問おう。そなたは“ブラックドラゴン”を単独で討伐できるのか?」


「……そんなこと、できるはずが──」


「だがサティはそれを成し遂げた。目撃者も複数いる。これは疑いようのない事実だ」


「ですが、」


「これは王の決定である。反対するのであれば、王命に逆らうとみなす」


「……陛下のお心のままに」


ファルメル子爵は、唇をかみしめながら下がっていった。



* * *


叙爵式の後、玉座の間に残っていたサティの元へ、ユーリシアが駆け寄った。


「サティさん、聞きましたよ! 貴族になったって!」


「……耳が早いですね」


「当然です。私の戦士様のことですもの」


「でも……まさか、あの街を統治することになるなんて。頑張ってくださいね!」


「……ありがとうございます」


いろんな人から「頑張れ」と言われるけれど、もしかして──これから行く街、ただの街じゃないのでは?


そんな不安を胸に、サティ・フライデーは新たな階段を一歩ずつ登っていくのだった。

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