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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第30章 学院占領編

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魔獣討伐試験

「ねぇ、サティ」


「どうしたの?姫様」


「さっき、相手のこと何か話してたわよね?会話は聞こえてこなかったけど」


カエラとかいう人が言ってた結界のこと本当だったのね。


「気にしないで。単なる世間話をしただから」


「なら良いんだけど」


「早く行かないと魔獣討伐試験の受付に間に合わないわよ」


「そうね」


私たちは話をせず黙ったまま魔獣討伐試験の会場である学院のとある施設に向かう。


「ここ、何も無いじゃん」

試験会場に着くとある男子受験生が呟く。


「ここはVR施設といって様々なことを体験するために作られた施設だ。君たちにはこの施設で魔獣と戦ってもらう」


「随分、本格的なんだな」


「おもしれえじゃねえか」

各々やる気満々のようだ。


「では始める。各々、戦闘空間に入りなさい」

舞台は何も無いところから森に変わる。



「楽しみね」


* * *


薄い光の膜をくぐり、サティは“戦闘空間”へ足を踏み入れた。


一瞬で景色が切り替わり、無機質だった床は鬱蒼とした森へと変わる。


湿った土の匂い。葉を揺らす微かな風。まるで現実と区別がつかない。


——ふぅん、再現度は悪くないわね。


サティは一歩、また一歩と進む。

周囲の魔力の流れを読み取りながら、静かに息を整えた。


「対象魔獣──〈鉄牙グリュン〉。この空間で討伐を確認できれば、試験は通過よ。」


頭上のスピーカーから、淡々と告げる教官の声。

サティは肩をすくめた。


「さっさと出てきなさい。隠れるだけムダよ」


言葉に応じたかのように、茂みの奥で ガサリ と音がした。

次の瞬間、木々を薙ぎ払って巨大な影が飛び出してくる。


六本の脚。鋼のように硬い牙。


赤く輝く魔眼を向け、〈鉄牙グリュン〉が低く唸った。


「吠える前に考えなさい。相手が悪いって」


サティは手をかざし、魔力を凝縮させる。

空気が震え、周囲の景色が歪むほどの密度。


——《暴食》、展開。


一瞬で、魔獣の足元の影が黒い水のように広がった。

気づいた時には遅い。

魔獣の身体が影に沈み込み、動きを封じられる。


「暴れても無駄よ。あなたの魔力は、全部あたしがいただく」


影が蠢き、魔獣の体から溢れる魔力を吸い上げていく。

〈鉄牙グリュン〉は苦悶の咆哮を上げるが、力が抜ける一方だった。


サティはゆっくり歩を進め、魔獣の目の前へ。


「これは訓練なのだから、できれば穏当に終わりたいところだけれど……」


影がさらに濃くなり、魔獣の足が完全に沈む。


「——まぁ、こうなるわよね」


指を鳴らした瞬間、影が爆ぜるように収縮し、

魔獣の巨体を一気に呑み込んだ。


残ったのは静寂と、風に揺れる草の音だけ。


サティは軽く背伸びした。


「はい、おしまい。次の課題は?」


スピーカー越しに、教官の驚きを含んだ声が返ってきた。


「……これにて討伐確認。サティ・フライデー、試験クリアだ。圧倒的、だな……」


サティはくすりと笑いながら、戦闘空間の出口へ歩き出した。


レイシアと話していた次の瞬間、ドン!と大きな音が施設中に鳴り響いた。

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