サティと王女の脱出劇
「真っ白で何も無い。ここはどこ?」
レイシアが不安な表情を浮かべながら呟いた問に私が答える。
「たぶん結界の中ね」
「結界?」
「そう。今、私たちは下界から隔離されている」
「何とかならないの?何故か魔術が使えないの」
得意な魔術を封じられ結界を破ることも出来ないんから、レイシアは悔しがっているに違いない。
「破れなくはないけど少し時間がかかるわ」
「どんな方法なの?」
自分の頭で考えて動くのも大事──と言いたいとこだけど今回ばかりは仕方ないわね。
「《憤怒》の権能を使うわ」
「《憤怒》?」
私の言っていることをレイシアは理解できていないらしい。
レイシアにはスキルのことは詳しく説明していないから当たり前だ。
「まぁ、武器みたいなものよ」
「そうなのね」
「いでよ、憤怒の剣」
私は剣を召喚し、空間に切れ目を入れようとする。
「やっぱり一筋縄じゃ行かないか」
「ごめんね、サティ。役立たずで」
「落ち込まないで。護衛として当然のことをしてるだけよ」
──こうなれば奥の手を使うしかない。
「もう脱出するなんて無理なのかな」
「お願いだからそんなに落ち込まないで!」
「サティは、どうして挫けないの?諦めないの?」
「そんなことしてる暇ないよ。だって私には守りたい人がいるんだから」
「守りたい人?」
私は話を続ける。
「そう。私はレイシアを守りたい。それに、誰にだって失敗はあるし挫折もする。悔しいけど人間、完璧じゃないからね。でも、大事なのは失敗した後にどう行動するのかじゃない?」
私の言葉にレイシアは顔を上げた。
「サティは凄いね。私はあなたみたいに強くなることは出来ないよ」
「強くなることは難しくても、強くあることはできるんじゃないの?それにレイシアは魔術で言えば優秀な部類だと思うよ」
「私が魔術、優秀?」
「そう、今は自覚が無いかもしれないけどね」
「さ、レイシア。こんなところ早く出よう」
レイシアは満面の笑みで頷いた。
「でも、出るってどうやって?」
「ちょっと、手を出して?」
「え?手を?」
私はサティの指示に従い、両手を前に出す。
「何をするの?」
そう問いかけるとサティも両手を前に出して私たちの手は触れ合った。
「これは......」
「私の魔力を流してるの」
「そんなこと出来るの!?」
「理論上は可能よ」
しばらく私たちは手を触れ合っていた。
「少しづつやっていこう。どうせ他にやることも無いし」
私たちは地道に、だけど確実に脱出するための準備を始めた。
***
──二日後。
「私の魔力にも馴染んできたわね」
「もう慣れたわ」
「始めるよ」
私は今まで貯めてきた魔力を使って《次元斬》を発動させた。
私の予想は的中し、壁に傷がつき次第に広がっていく。
「これで脱出、出来るね」
隔離されてから出るのに四日程かかってしまった。
「早く外の状況を確認しないと」
私たちは次元の狭間を通り学院へ向かう。




