再会
「サティさん宛に手紙が届いていますよ!」
昼下がりの食堂で昼食をとっていた私に、看板娘のモンファが声をかけてきた。手には一通の手紙を握っている。
「手紙? 誰からだろう……」
受け取って封を開けると、見覚えのある筆跡で書かれた一文が目に飛び込んできた。
> 《死神》よ。最近、ギルドを休んでるようだが何かあったのか?
色々と話を聞きたい。王都にあるギルド本部まで来てくれ。
――差出人は、王都ギルド本部の総督、ハイド。
「……そういえば、最近、ギルドで働いてなかったな……」
嫌な予感がする。叱られるのは避けたいところだが、逃げるわけにもいかない。私は意を決して、王都ギルドへと向かった。
* * *
「久しぶりだな、《死神》」
「……久しぶりです。なんのご用でしょうか?」
ギルド総督ハイドの顔は変わらず豪快だったが、その目にはしっかりと観察の色があった。
「なんのって……分かってるだろうが? 最近ギルドに顔を出していない理由を聞きたくてな」
「……それについてはお詫びします。あと、今日はお願いがあってきました」
「お前が“お願い”なんて、雪でも降るのか?」
「……私の所属を、トキワカウンターから王都のギルドに移したいんです」
「急だな。理由を聞こうか?」
私はこれまでの出来事――ユーリシア様との関係、王家専属の申し出まで、すべてを説明した。
「……なるほど。そういう流れだったか。予想以上にでかい話になってるな」
「ええ」
「移籍は簡単じゃないが、“短期研修”という形なら可能だ。一週間、王都所属として扱う」
「ありがとうございます。それで構いません」
「……それにしても、あの嬢ちゃんが戦士になってるとはな。世の中、何が起こるかわからんもんだ」
* * *
翌日。
私は再び王城へと招かれていた。
「冒険者サティよ。王家専属冒険者の話――受けてくれるか?」
「……はい。身に余る光栄です。是非、お受けしたいと思います」
王都での活動も増えるだろう。何より、ユーリシア様に“いつでも会える”というのは大きな理由だった。
「では、これを授けよう」
そう言って、国王陛下アーノルドは、王家の紋章が刻まれた小刀を私に差し出した。
「その力、国のために役立ててくれ」
「はい……必ず」
* * *
謁見の後、私は転移魔法で自宅に戻り、ギルドにも顔を出した。
「先輩!」
「お土産、ありがとうございます!」
「最近来ないから心配してたんですよ!」
久しぶりのギルド。仲間たちの明るい声に囲まれて、私は自然と笑顔になる。
「ごめんごめん。これからはちゃんと顔出すようにするから、許してね」
「許しますけど、またお土産お願いしますね!」
「うん、任せて!」
笑い合う時間の中、私は少しだけ昔の自分を思い出していた。
* * *
その頃――王都、王城の応接室。
国王アーノルド、王妃、そして宰相が密やかに話し合っていた。
「トキワタウンの領主職……あの《死神》にやらせてみては?」
「彼女なら務まると思うけど……陛下、どうお考えですか?」
「……ふむ、あそこにはすでに領主がいるから難しいだろうな」
「では、王都近郊の街を任せるというのは?」
「うむ。それなら可能かもしれん。王家専属冒険者にした以上、爵位を与えることも考えねば」
「では、その方向で準備を進めましょうか」
「そうじゃな――《死神》サティ・フライデーを、侯爵相当として迎えることにするか」
サティの知らぬところで、新たな運命の歯車が回り出していた――。




