新人のトラブル
昼下がりのギルド。
カウンターに慌てた様子で駆け込んできたのは、まだ十代半ばの新人冒険者たちだった。
「す、すみません! 依頼の途中で……魔物に荷物を奪われてしまって!」
「しかも仲間の一人がまだ森に……!」
受付に緊張した空気が走る。
隣で書類整理をしていたルリが顔を上げた。
サティは落ち着いた声で言う。
「まず深呼吸して。無事に帰ってきただけでも大事なことよ。……状況を詳しく教えてくれる?」
新人たちが必死に説明するのを聞きながら、サティは素早く紙に書き出していく。
「場所は東の森。荷物を奪ったのはウルフ系の魔物……。そして仲間が一人取り残されている、と」
「は、はい……!」
すぐにギルドの冒険者に救援依頼を回しつつ、サティは新人たちに優しく微笑んだ。
「大丈夫。すぐに手を打つから。あなたたちはここで休んでて」
そのとき、横からルリが口を開いた。
「サティ、私も行くよ。状況確認して、もし必要なら救援のサポートをする」
「……頼もしいね。じゃあ、気をつけて」
ルリは冒険者の一団と一緒に森へ駆け出していった。
残された新人たちは、不安げにサティを見つめる。
「……仲間、ちゃんと戻ってきますよね……?」
「ええ。信じて待っていましょう」
サティは穏やかに答え、その手をそっと握ってあげた。
数時間後――。
泥だらけになったルリと冒険者たちが、無事に仲間を連れ帰ってきた。
歓声と涙に包まれる新人たちの姿を見て、サティは胸を撫でおろす。
「ふぅ……やっぱり受付嬢って、現場にも負けないくらい大事な仕事だね」
ルリが笑いながら隣に立つ。
サティも微笑んで、頷いた。
――こうしてまた、ギルドには小さな成長と絆が刻まれていった。




