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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第3章 王女護衛編

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王家専属冒険者

王城の謁見の間に、静寂が広がっていた。

国王アーノルド陛下の前にひざまずいた私――サティ・フライデーは、厳かすぎる空気に少し緊張しながらも、落ち着いた声で挨拶を交わしていた。


「サティよ。我が娘が迷惑をかけたな」


「気になさらないでください。……おかげで、ユーリシア様と友人になることができました」


「……その言葉、感謝する。心が広いな」


「そんなことありません」


まさか王様から直接、礼を言われる日が来るとは思わなかった。

内心では戸惑っていたが、表情は変えず、礼儀正しく頭を下げる。


しかし、陛下は一度私から視線を外し、逡巡するように眉を寄せた。


「ところでな……冒険者サティに、頼みがあるのだ」


「依頼……ですか?」


「いや、依頼というよりは……少し違うのじゃが……」


はっきりしない物言いに、私は王様の顔をじっと見つめた。

その隣で、王妃様が優しく微笑みながら小さく促す。


「陛下、話を続けてくださいな。こんな時ばかり引き伸ばさなくてもよろしいでしょう」


「……わ、分かっておるわ!」


咳払いを一つしてから、ようやく陛下は本題に入った。


「サティ――王家専属の冒険者になってくれんか?」


「……王家、専属ですか」


その言葉の意味をすぐに理解できず、私は思わず聞き返した。

一国の王家が、たった一人の冒険者に専属契約を持ちかける――それが、どれだけ特別で、どれだけ重いことか。


「クラリス、あれを持ってこい」


「かしこまりました」


奥に控えていたメイド――クラリスが静かに頭を下げ、宝物庫へと足を運んでいく。

戻ってきた彼女の手には、銀と蒼の細工が施された一振りの小刀があった。


「これは……」


「王家の紋章が刻まれた、小刀じゃ。正式に専属となれば、これを授ける」


目の前で差し出された小刀は、まるで意思を持っているかのように、鋭く、美しかった。


「……立派なものですね」


「なってくれるか?」


陛下の真剣な瞳が、私の内心を探るように揺らめいていた。

だが、私はすぐに答えを出すことはできなかった。


「――少し、時間をいただけますか? あと二日は王都に滞在する予定なので……帰る時までに、必ずお返事をいたします」


「……うむ。急いでおるわけではない。帰る時に、返事を聞かせてくれればそれでよい」


「ありがとうございます。それでは、失礼します」


私は丁寧に一礼し、静かに謁見の間をあとにした。



* * *


王都の宿に戻った私は、ベッドに身体を投げ出した。


「疲れたなぁ……」


大理石の床、荘厳な空気、王族の視線。慣れない空間に緊張しっぱなしだった。

目を閉じると、脳裏に浮かぶのは――ユーリシアの笑顔だった。


「……あと二日。どうするかな」


王家専属――それは、名誉と責任が伴う立場だ。

だが同時に、それは“選ばれし者”だけが得られる絆でもある。


「明日、もう一度……会いに行こう。きっと、あの子なら……答えのヒントをくれるはずだ」


私は静かに息を吐き、深く深く眠りへと沈んでいった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


物語が3章に入りました。

ここら辺から王族との関わりも多くなってくる予定です。

サティの物語はこれからどうなっていくのか。どのような展開になるのか。


3章は4章までの繋ぎなので長くはならないと思うから楽しんでください。私も楽しみながら書きたいと思います。


それでは次回のお話でまたお会いしましょう。

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