祭りの余韻
祭りの夜。
広場はまだ賑やかで、子供たちが走り回り、大人たちが酒を片手に笑い合っていた。
サティとルリは花火を見終え、帰ろうかと歩き出したそのとき───
「……あの、すみません! うちの子を見ませんでしたか?」
泣きそうな顔をした母親が声をかけてきた。
聞けば、祭りの人混みで幼い娘とはぐれてしまったらしい。
サティは即座に頷いた。
「わかりました。一緒に探しましょう!」
「ルリ、手分けして見て回ろう」
「はい!」
二人は人混みを縫って駆け出す。
サティは《感知》のスキルを使い、幼い子供の魔力反応を探った。
やがて、屋台裏の静かな路地で、小さな影を見つける。
「……お母さん……」
泣きながら膝を抱えていた少女を見つけ、サティは膝をついて優しく声をかけた。
「大丈夫、もう安心だよ。お母さんが待ってるから、一緒に帰ろう」
少女は泣きじゃくりながらもサティの手をぎゅっと握る。
そこにルリも駆けつけ、母親を呼びに走った。
再会の瞬間。
母親は娘を抱きしめて泣き、娘も泣きながらしがみついた。
その様子を見て、サティは胸がじんわり温かくなる。
「……よかった、本当に」
「サティさん、やっぱり頼りになりますね」
ルリが微笑む。
サティは肩をすくめて小さく笑った。
──こうして、祭りの夜に起きた小さな騒動も、静かに幕を下ろした。
ギルドの受付嬢として。
冒険者として。
そして、一人の人として。
サティは、守れるものを守れたことに心から安堵していた。




