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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第27章 収穫祭編

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収穫祭

ルメリアに戻ってから数日。


サティの日常はすっかり「受付嬢モード」に戻っていた。


朝、制服に着替え、ギルドのカウンターに立つ。旅を共にしたルリは書類整理を手伝ったり、近くの席に座って魔道書を読んでいたりと、自然と職場に溶け込んでいた。


「サティさん、この依頼の報告お願いします!」

「はい、討伐証拠はこちらで確認しますね」


冒険者たちが次々にやってくる。


以前と違うのは、サティが誰よりも迅速に処理できることだ。


スキルで魔力の流れを把握し、偽造や虚偽を一瞬で見抜ける。


そのため不正申告は一件も起きなくなった。


「サティさんがいると楽だなぁ」

「前よりもギルドがスムーズに回ってる」


冒険者たちの信頼も厚くなっていく。


サティは微笑みながらも、内心では少し照れていた。


───でも、こうして普通に仕事をしている時が一番落ち着くな。


昼休み。


ルリがそっと差し入れを持ってきた。

「今日は一緒に食べませんか?」


「ありがとう。……ふふ、ルリの手作りサンドイッチ?」


「ええ。朝から頑張ってみました」


そんな他愛ない時間が、サティにとっては何よりの癒しだった。


冒険も戦いも大切だけれど、受付嬢として過ごす日々が、やっぱり自分の原点なのだと実感する。


───そして、夕方。

今日の業務を終えたサティは、窓から夕焼けに染まるルメリアの街を眺めた。


「平和だなぁ……」

彼女の心に、不穏な影はまだ一切差し込んでこなかった。



***


ルメリアに帰還して数週間。


季節は収穫期を迎え、街はにぎやかな「収穫祭」の準備に沸いていた。


広場には屋台が立ち並び、色鮮やかな布や旗が風に踊る。


「サティさん、今年はギルドも出店するらしいですよ」


「えっ、ギルドが? 何をやるの?」


「討伐依頼の展示と、ちょっとした余興みたいです。冒険者たちの腕試し大会とか」


ルリが手にしたチラシを見せると、サティは苦笑する。

「……結局、冒険者向けの催しなのね」


けれど内心は少し楽しみでもあった。


当日。


ギルド職員も全員が祭りに駆り出され、サティも受付嬢として屋台のカウンターに立った。


「ギルド特製ポーション、いかがですかー! 一日限定販売ですよ!」

普段は冒険者しか口にできない回復薬を、一般市民が手にできるとあって長蛇の列。


サティは笑顔で応対しながら、やっぱり人と触れ合う仕事が好きだと実感する。


合間にルリと一緒に街を回れば、焼き菓子の甘い香り、果実酒の鮮やかな香り、楽団の奏でる笛や太鼓の音。

「サティさん、あっちに綿飴がありますよ」


「えっ、懐かしい……。子供の頃以来かも」

ふたりは並んで一つの綿飴を分け合い、頬をほころばせた。


夜。


祭りの締めくくりは、中央広場での舞踏と花火。冒険者たちも、商人も、市民も、誰もが笑顔で踊り、歌い、空を見上げる。


サティはルリと肩を並べて花火を見上げながら、静かに呟いた。


「……こういう時間が、ずっと続けばいいな」


───そして、祭りの夜は更けていった。

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