ルメリア到着後
夕陽に照らされる城壁の門をくぐると、街の喧騒が一気に押し寄せてきた。
商人の声、子どもたちの笑い声、馬車の車輪が石畳を弾く音。
そのどれもが懐かしく、サティとルリの胸に安堵をもたらす。
「やっぱり……この街の音、好きだな」
ルリがほっとしたように呟く。
「私たちの拠点だからね」
サティは微笑み、真っ直ぐに大通りを進んだ。
目指すは、冒険者ギルド。彼女が日常を送る、もうひとつの「家」だ。
ギルドの扉を押し開けた瞬間、中にいた職員や冒険者たちの視線が一斉に集まった。
そして───次の瞬間。
「サティさん!」「無事に戻った!」
歓声が湧き起こる。
仲間たちが駆け寄り、彼女を取り囲んだ。
「……ただいま戻りました。依頼は無事、完了です」
サティがそう告げると、場の空気が一気に和らぐ。
安堵と歓喜の混じった笑い声が広がり、彼女の頬にも自然と笑みが浮かんだ。
受付カウンターの奥から、長い髪をまとめた副ギルド長が歩み寄ってくる。
「よくやってくれましたね、サティ。詳細な報告は後ほどで構いません。まずは休んでください」
サティは頷き、ルリの肩に視線を向けた。
長旅と戦いの疲れが色濃く出ているが、それでも彼女は誇らしげに胸を張っていた。
「……サティ。やっと帰ってこられたね」
「ええ、帰ってきた。ルメリアに」
二人の会話を聞いていた冒険者たちが、自然と拍手を送った。
それは勝利の凱旋を迎える祝福であり、同時に新たな戦いの幕開けを示すものでもあった。
───影は消えていない。
だが、この街がある限り、彼女は何度でも立ち上がるだろう。




