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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第27章 収穫祭編

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ルメリア到着

 祭壇を後にしたサティたちは、森の小道を踏みしめて歩いていた。


 先ほどまで瘴気に覆われていた木々は、いまや鮮やかな緑を取り戻しつつある。鳥のさえずりや、風にそよぐ枝葉の音が、まるで祝福のように耳に届いていた。


「……静かね」

 ルリがぽつりと呟く。


 緊張の糸が切れたのか、彼女は少し眠たげな顔で空を仰いでいた。


「もうすぐ抜ける。この森を越えれば、ルメリアの街並みが見えるはずだ」

 サティの声は落ち着いていたが、その心にはまだ戦いの残響が渦巻いていた。


 黒幕の最期の言葉。『主』と呼ばれた存在。


 あれが何を意味するのか。いずれ確かめなければならない。


 だが今は。


「まずは街へ戻って、皆に報告だな」


「うん。ギルドの子たちも心配してるはずだよ」

 ルリの笑みは弱々しいが、それでも安堵に満ちていた。


 やがて森を抜けた一行の視界に、広大な平原が広がった。


 その先に、陽光を浴びて輝くルメリアの姿が見える。


 遠くからでも分かる賑わいと、空を行き交う鳥の群れ。


 それは、戦いを終えた者たちへの何よりの褒美のように思えた。


「帰ってきたわね……」

 サティが小さく呟く。


 彼女の隣で、ルリが嬉しそうに胸に手を当てた。

「ただいま、だね」


 二人の背後で、クラウディアが静かに目を細める。


 その横顔は安堵を湛えていたが、同時にどこか思案を秘めていた。


「……影はまだ消えません。けれど、今は束の間の休息を」

 その言葉は風に溶け、誰に届くでもなく消えていった。


 ルメリアの街へ続く道。


 サティたちはその先へと足を踏み出した。


 旅路は終わらない。だが、今は確かに“帰還”の時だった。

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