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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第26章 祭壇崩壊編

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旅路の終わり

 祭壇を覆っていた黒い瘴気は、黒幕の消滅と共に霧散していった。


 静まり返った森の奥で、サティはしばし膝に手をつき、荒い呼吸を整えていた。


「……終わった、の?」

 ルリが呟く。彼女の白い頬には汗がにじみ、しかしその瞳には安堵の光が宿っている。


「ああ……奴の気配は完全に途絶えた。もう動き出すことはないだろう」


 サティはそう答えながら、祭壇の中央に残された黒い結晶の欠片を見下ろす。


 黒幕の力の核と思しきそれは、いまや砕け散り、ただの石ころに戻っていた。


 ───だが。


(すべてが終わったわけではない。この影の背後には、まだ誰かがいるはずだ)


 サティの心中には確信があった。黒幕が用いた魔術、瘴気の質、そして最後の瞬間に呟いた「主」という言葉。


 討ち果たしたのは駒に過ぎない。


 その真実は、彼女の胸を冷たく締めつける。


「サティ」

 そっと肩に触れるルリの手が、彼女を現実へと引き戻した。


 見ると、クラウディアが森の外れに立っている。

 いつの間にか姿を現した彼女は、ただ静かに頷いた。


「影は退けられました。けれど、影を操る意志はまだどこかに潜んでいます」


「わかってる。でも今は……戻らないと」


「ええ。ルメリアには人々が待っていますから」


 サティは深く息を吐き、森を見回した。かつて怨念に満ちていた空気は澄み、鳥たちが小さく鳴き始めている。


 静寂の中に、再び命の気配が満ちていく。


「行こう。報告もしなきゃならないし、休息も必要だ」


「うん……帰ろう、サティ」


 二人は肩を並べ、祭壇を後にした。


 木々の隙間から差し込む光が、戦い抜いた彼女たちの背を静かに照らしていた。

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