黒幕との戦い
森の祭壇にて───。
黒幕の外套が裂けるように広がり、そこから迸る漆黒の魔力が森全体を侵食する。
木々は枯れ、地面はひび割れ、瘴気の奔流がサティへ押し寄せた。
「───《奈落の奔流》」
黒幕の詠唱と同時に、黒き奔流が津波のように迫る。
サティは焦らず、冷静に応じる。
「……暴食よ」
その小さな声に応じて、彼女の影が大きく広がり、黒い奔流を飲み込むように吸収していく。
「ほう……吸い尽くすか」
黒幕が目を細めた。
しかし次の瞬間、瘴気の奔流が分裂し、獣の形をとってサティに襲いかかる。
「ルリ!」
サティの声に、後方で祈りを捧げていた少女が両手を突き出す。
「───《光槍》!」
幾筋もの光の槍が闇の獣を貫き、瘴気を霧散させる。
「援護は任せて!」
ルリの声にサティは頷き、前へ踏み込んだ。
黒幕は祭壇に片手を添えながら、不気味に笑う。
「だが遅い。儀式はすでに始まっている」
祭壇の紋様が眩く赤黒い光を放ち、空間が裂ける。
そこには───ねじれた虚空。
「……扉を開くつもり!?」
サティは咄嗟に杖を掲げ、術式を編み上げる。
「───《禁呪・暴食解放》」
影が地面から一斉に伸び、祭壇を縛り付けるように絡みつく。
「力で封じるか。だがそれは世界に牙を剥く行為と同じだ!」
黒幕の声が轟く。
同時に、祭壇を中心に瘴気の嵐が吹き荒れ、サティと黒幕の力が激突した。
──轟音。
──閃光。
光と闇が交錯し、森が震える。
その瞬間、サティの耳にクラウディアの声が響いた。
(──迷うな、サティ。忍耐の先にこそ道はある)
彼女はぐっと杖を握りしめ、黒幕を真っ直ぐに睨んだ。
「あなたを止める。それが、この手に与えられた役割だから!」
黒幕は外套をはためかせ、瘴気の剣を形作る。
「ならば示してみせろ。お前が選んだその“力”の意味を!」
──祭壇を挟み、サティと黒幕の死闘が始まった。




