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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第26章 祭壇崩壊編

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黒幕の影

夜の森は、闇と静寂が支配していた。風に揺れる木々のざわめき、時折聞こえる小川のせせらぎ───すべてが、サティの感覚を研ぎ澄ませる材料になる。


「ここまでの痕跡……間違いなく黒幕の残したものね」

サティは低く呟き、地面に残る魔力の残滓を指先で確認する。


ルリは後ろで警戒の目を光らせながら、慎重に歩を合わせる。


森の奥へ進むほど、闇の濃度は増し、視界は限られていく。だが、サティは暴食のスキルで僅かな魔力の波動を捉え、進むべき方向を見極めた。


「この微かな残滓……あそこに導かれているわ」


やがて、小川が大きく蛇行する開けた場所に出る。水面に映る月明かりは、森の闇を一層濃く見せる。そこには、森の中では異様に整然と並べられた石がいくつもあった。


「……あれが祭壇……?」

ルリが息を飲む。石は古く、しかし魔力で縁がかすかに光っている。明らかに自然のものではなく、誰かの意図で置かれた痕跡だった。


サティは一歩ずつ近づき、手をかざして魔力の流れを感じる。石の並び、魔力の流れ、闇に混じるかすかな声───黒幕がこの場所に何かを残したことは間違いない。

「……ここまで来たのね」


森の静寂の中、二人は祭壇の前に立った。


ルリは横で小さく息を整え、サティを見上げる。

「……ここからが本番ね」


サティは頷き、目を細める。

「ええ、この祭壇が黒幕の意図を知る鍵になる。ここから、全てが始まる───」


闇に沈む祭壇の周囲、風に揺れる木々、そしてかすかな魔力の残滓。すべてが、黒幕からの“挑戦状”のように、二人を迎え入れていた。



***



祭壇の前に立ち、サティは周囲を見渡す。闇と光が混じる空間、風に乗って微かに響く声──すべてが計算され、彼女を誘導しているようだった。


「ここが……黒幕の次の仕掛け……?」

ルリが警戒の目を光らせる。


その瞬間、地面が震え、石が一斉に浮き上がった。森全体の闇が形を変え、複数の幻影がサティたちを取り囲む。


「……幻影?」


「ただの幻ではないわ……これは試されている」


サティは冷静に観察する。


幻影の動きには微妙な癖がある。動きがリアルに見える部分と、微妙に不自然な部分。黒幕は意図的に彼女の観察眼と反応を試しているのだ。


「ルリ、この幻影、私を惑わすためのものよ。でも全部を本物だと思わないこと」


「了解」


サティは暴食のスキルを使い、幻影の一部を吸収して逆にエネルギーに変換する。吸収した力で幻影の動きを逆手に取り、黒幕に心理的な揺さぶりをかける。


幻影の一つが実体化し、迫ってくる。しかし、サティはその動きを読み切り、わざと誘導。逆に幻影の虚を突いて一瞬の隙を作る。

「……これが、私のやり方よ」


黒幕の声が森に響く。

「ふふ、やはりただ者ではない……暴食の力も、思った以上に使いこなしているわね」


その言葉の端々に、黒幕の動揺が含まれていた。サティは気づく───力だけでなく心理戦でも優位に立ちつつある、と。


さらに観察を続けると、幻影の配置や動きにはパターンがあり、黒幕の癖が見えてきた。つまり、次に動く場所、意図する場所も予測できる可能性がある。


「……これで、次の接触は私のペースで進められる」

サティはルリに小さくうなずく。


「準備はいい? 次に黒幕に会う時は、こちらが主導権を握るわ」


ルリも力強く頷き、二人は森の奥深くへと進む。


闇の中で、黒幕の影は微かに揺れる。

「ふふ……面白くなってきたわね、サティ・フライデー……」


森の奥での試練───それは、黒幕とサティの心理戦と力比べの序章に過ぎなかった。

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