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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第26章 祭壇崩壊編

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糸口

サティはわずかに口元を歪めた。

「幻影で惑わせるつもりなら、むしろ都合がいいわ」


影がにやりと笑ったように見えた瞬間、十重二十重の幻影がサティとルリを取り囲む。森の木々さえ歪み、現実と幻の境界が曖昧になる。

「ここからは、あなたの目と心が耐えられるかどうかよ」


だがサティは動じない。


幻影に混じる微かな“違和感”───空気の流れ、足音の消え方、視界の死角。暴食で喰らい取った幾つもの魔術の知識が、彼女に冷静な分析を与えていた。


「ルリ、右前方――実体はそこ!」

「任せて!」


ルリが即座に剣を振り抜くと、空気が震え、黒幕の影が一瞬よろめいた。

「……見抜いた、だと?」


サティは幻影の一部を吸収し、逆に“偽の自分”を生み出す。それを影の死角に配置し、黒幕に誤認させる。

「心理戦を仕掛けるつもりなら、私も返すだけよ」


黒幕はわずかに舌打ちをした。

「なるほど……暴食とは、ただ喰らうだけの力ではないということか」


その声に、サティは気づく。冷静で、知性を感じさせながらも感情の揺らぎを必死に隠している。まるで彼女の予想外の成長を、認めたくないかのように。


(……この声、どこかで聞いたことがある……?)


わずかな既視感が胸をよぎる。しかし記憶の中で名前にまでは繋がらない。だが確かに、サティが以前どこかで関わった存在の気配。


「あなた、いったい――」

問いかけたその瞬間、影は空気を裂くように大きな一撃を放ち、森の中が光と闇で引き裂かれる。


ルリがサティを庇い、二人は木陰に飛び退く。

「サティ、今のは……!」


「ええ、ただの牽制じゃない。私たちをこれ以上深入りさせたくないのね」


黒幕は姿を煙のように揺らしながら、言葉を残した。

「次は……もっと深い場所で会いましょう。その時には、隠す必要もなくなるわ」


そう告げて影は霧散した。残されたのは、ひどく張り詰めた森の静寂と、正体の残り香。


サティは拳を握り、深く息を吐く。

「……必ず突き止める。あの声の主が誰なのか、そして何を企んでいるのか」


ルリは小さく頷き、サティの隣に立った。

「私も一緒に。どこまででも」


二人の決意が夜の森に響いた。

そして───黒幕の正体に迫る糸口は、確かに掴まれていた。

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