サティvs頭領
盗賊団の本拠地・洞窟の奥。
副頭領との死闘を制したサティは仲間たちの背後で、ただひとり、頭領と対峙していた。
「ほう……《暴食》の継承者か。女でありながらその力、興味深い」
「盗賊風情が大口を叩くのね」
頭領は重厚な黒杖を掲げると、魔力の奔流が洞窟を震わせた。火と雷の複合魔法が奔流となってサティに襲いかかる。
サティは即座に影を展開。足元から噴き出した黒影が盾となり、火雷を飲み込み、溶かすように消した。
「……っ、私の魔法を呑み込むだと?」
「暴食は、喰らったものを力に変える」
次の瞬間、サティの影から同じ火雷が逆流する。
頭領は魔力障壁で辛うじて受け止めたが、表情に焦りが浮かぶ。
「魔法を返すだけではない――」
サティの影は床を這い、頭領の足を絡め取った。
だが頭領は咄嗟に空中へ浮かび上がり、広域殲滅魔法を詠唱。
洞窟全体が赤熱する。
「逃げ場はないぞ、小娘ッ!」
しかしサティは一歩も退かず、静かに呟く。
「暴食─解放」
彼女の影が暴走するかのように膨張し、灼熱をすべて吸い込んだ。
返す刀で、彼女は黒影の刃を放つ。
まるで無数の剣山が頭領に襲いかかるかのような斬撃の嵐。
「馬鹿なッ……!」
防御ごと引き裂かれた頭領は膝をつき、血を吐いた。
サティは歩み寄り、冷たい瞳で告げる。
「これが――ギルドの受付嬢を敵に回した報いよ」
影の刃が最後の一撃を刻み、頭領は絶叫とともに崩れ落ちた。




