サティvs副頭領
サティは仲間の前に立ち、副頭領と対峙した。
風に揺れる黒髪、静かに掲げられる右手。その指先に魔力の光が灯る。
「……魔法使い風情が、この俺を倒せると思うなよ!」
副頭領は咆哮し、大斧を大地に叩きつけた。轟音と共に土煙が舞い上がり、サティの視界を覆う。
だが───
「───《シャドウ・バインド》」
サティの低い声と共に、土煙の中から黒い影が伸び、副頭領の両足を絡め取った。
「なにっ……! 動け……ぐぬぬっ!」
「力任せに振りほどけると思ったら大間違いよ」
その瞬間、彼女の周囲に六つの魔法陣が浮かび上がる。炎、氷、雷、風、土、そして影。属性の異なる魔力が渦を巻き、唸りを上げながら副頭領を取り囲んだ。
「馬鹿な……同時詠唱だと!?」
仲間たちすら息を呑む。
サティは一歩踏み出し、指先を振り下ろした。
「───《六連魔導・殲滅の環》」
轟烈な炎が燃え広がり、氷の槍が突き刺さり、雷鳴が炸裂する。暴風が副頭領の身体を打ち据え、大地が隆起して鎖のように絡みつき、最後に影が全てを呑み込んだ。
「ぐあああああああっ!」
絶叫が森を震わせる。副頭領は必死に大斧を振るうが、次々と襲い掛かる魔法に防御も追いつかず、ついに地面に叩きつけられた。
その巨体が動かなくなると、辺りに静寂が戻った。
仲間たちは呆然と立ち尽くす。
「……さすが、サティ……」
「副頭領が、こんなにあっさり……」
サティは肩で息をしながらも、冷ややかな眼差しで小屋を見据えた。
「終わりじゃない。……気配を感じる。奥に、まだ“頭”がいるわ」
次の瞬間、小屋の奥からゆっくりと扉が開いた。
その影は、冷徹な眼光を放ちながら姿を現す。
「なるほど……副を倒すとは。噂以上の実力だな」
───盗賊団頭領。
真の敵が、ついに姿を現した。




