副頭領との激戦
大斧を肩に担いだ副頭領は、にやりと獰猛な笑みを浮かべると、地面を踏み砕くように一歩踏み出した。
「こそこそと小屋に忍び込む度胸はあるようだな……だが、俺の斧を前に生きて帰れると思うなよ!」
豪快な叫びと同時に、大斧が振り下ろされる。地面が爆ぜ、土と砂利が宙を舞った。
前衛のアレンが盾で受け止めようとするも、衝撃は凄まじく、腕ごと吹き飛ばされかける。
「ぐっ……! こいつ、力が桁違いだ!」
「なら、速さで翻弄する!」
リーナが槍を滑らせるように突き込むが、副頭領は片腕で斧を薙ぎ払い、火花を散らして弾き飛ばす。
「生意気な小娘が!」
その隙を狙って背後に回り込んだカイルが短剣を振るう。だが副頭領は身を捻り、鉄の籠手で刃を受け止めた。
「チッ……硬ぇ!」
後方のミレイが即座に詠唱を終える。
「───《ウィンド・ランス》!」
鋭い風の槍が飛び出し、副頭領の肩口を掠めた。血が飛び散り、巨体が僅かに揺らぐ。
「やったか!?」
「まだだ!」
副頭領は傷をものともせず、大斧を横薙ぎに振り抜いた。轟音と共にアレンとリーナが弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「くっ……強すぎる……!」
「……あの巨体で、まだ動きが鈍ってないなんて……!」
副頭領は血走った目で仲間たちを睨み据え、息を荒げながら笑った。
「いいぞ……久々に心が躍る戦いだ。もっと俺を楽しませろ!」
圧倒的な力の前に、仲間たちは一瞬だけ怯んだ。だがそのとき───背後から一歩、静かな気配が前に出た。
「───もう十分。ここからは私が出る」
サティが、漆黒のローブを翻し、仲間の前へと歩み出る。
その眼差しは氷のように冷たく、しかし確かな決意に燃えていた。
「副頭領……あなたを倒して、この騒ぎに終止符を打つ」
副頭領は狂気を孕んだ笑みを浮かべ、斧を構える。
「面白ぇ……来い、小娘! その細腕で、この俺を倒せるものならな!」
───サティと副頭領。
両者の気配がぶつかり合い、森の空気が震えた。




