盗賊退治
広間がざわめく中、宿の主人が震える声で口を開いた。
「……もしかすると、山賊どもの仕業かもしれねぇ」
その言葉に一同の視線が集まる。
「近ごろこの辺りを荒らしている盗賊団がいるんだ。道を行き交う旅人から金品を奪って、時には人をさらうって噂だ」
商人は青ざめて腰を抜かした。
「そ、そんな連中がこの宿にまで……!?」
場の空気が緊張に包まれる中、出会った仲間の一人が立ち上がる。
「放ってはおけないな。旅人同士、困った時は助け合うもんだろ?」
別の仲間も頷く。
「被害がこれ以上広がる前に、奴らの根城を突き止めるべきだ」
宿に泊まるはずの静かな夜は一変し、急ごしらえの討伐隊が組まれていった。
松明の灯りを掲げ、数人の旅人たちが夜の森へと足を踏み入れる。
月明かりの下、獣道を進むその先には──盗賊団の根城が潜んでいるのだった。
***
森の奥へ進むと、焚き火の赤い光が木々の隙間から漏れていた。
息を潜めて近づくと、粗末な木造小屋と、その周囲にたむろする十数人の盗賊たちの姿が見える。
獲物を前に、彼らは豪快に笑い、盗んだ酒をあおっていた。
「ここが奴らの根城か……」
仲間の一人が剣を抜く。その刃が月光を反射し、冷たい光を放った。
「正面から行く。いいな?」
その声に、皆が頷く。
次の瞬間───。
「おらぁっ!」
仲間の一人が松明を投げ込み、焚き火が爆ぜた。
驚き立ち上がる盗賊たちに向かって、サティたちは突撃する!
「な、なんだぁ!? 旅人どもが攻めてきやがった!」
「かかれぇっ!」
剣と剣が激しくぶつかり合い、火花が夜の闇を裂く。
矢が飛び交い、盾で弾き返す音が響く。
サティの仲間は声を張り上げた。
「盗まれたものを返してもらうぞ!」
戦場は一気に混沌となり、怒号と鉄の音が交錯する。
そして───小屋の奥から現れたのは、分厚い鎧をまとった大柄な男。片腕に大剣をぶら下げ、顔には傷跡が走っている。
「チッ……俺の縄張りで好き勝手しやがって。てめぇら、ただの旅人じゃねぇな」
盗賊団の頭領が姿を現した。
その威圧感に、場の空気が一変する。
いよいよ、戦いの本番が幕を開けようとしていた───。




