表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第25章 盗賊退治編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

217/264

新たな出会い

 朝靄の中、旅人亭の扉がきしんで開いた。


 中ではまだ昨夜の余韻が残っていて、樽の香りと焼き立てのパンの匂いが混じり合っている。カウンターの奥では亭主の妻が手際よくスープを温めており、木製の長卓には早起きの客が数人、黙々と朝食をとっていた。


 階段を下りてきた主人公に、亭主が気さくに声をかける。


「おはようさん。ぐっすり眠れたか?」


「ええ、おかげさまで」

 硬い寝床を覚悟していたが、出された部屋は思いのほか清潔で、夜通し降り続けた雨の音にさえ安らぎを感じられた。


 朝食を受け取って席につくと、隣には昨夜見かけた旅人がいた。赤いマントを羽織った青年で、こちらに軽く会釈してからパンをちぎる。


「この辺りに来るのは珍しいだろう。どこから来た?」

 不意に声をかけられ、サティは少し考えてから答えた。


「……遠い北の方から。道を探している最中なんです」


 青年は興味深そうに目を細める。


「なら、この旅人亭は良い場所に寄ったな。ここでは行き交う旅人が必ず何かを残していく。噂でも、地図でも、あるいは……運命そのものでも」


 その言葉に、サティはスープを口に運ぶ手を止めた。


 ただの宿だと思っていた「旅人亭」が、何かを繋ぐ場なのかもしれない。そう思った瞬間、入口の扉が勢いよく開いた。


 ずぶ濡れの商人風の男が転がり込むように入ってくる。

「た、大変だ! 街道沿いで盗賊が出た! 荷車を全部……!」


 旅人亭の空気が一変した。客たちの視線が一斉に男へと向けられ、ざわめきが広がっていく。


 サティはパンを置き、静かに立ち上がった。


 これがただの休息の場所ではない───「旅人亭」で出会った者たちと共に、新たな出来事が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ