王都を発つ旅立ちの朝
夜明けとともに、王都の鐘が低く鳴り響いた。
宿の窓から差し込む朝の光は柔らかく、昨夜までの賑わいが嘘のように街は静まり返っている。
荷物をまとめ、玄関を出ると、まだ眠たげな空気の中でパンの焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。
通りには朝市の準備をする人々の姿が見え、彼らは忙しくも朗らかに声を掛け合っている。
「……本当に、発つんだな」
仲間が背伸びをしながら呟く。
「うん。少し名残惜しいけど、次の旅が待ってるからね」
昨日の夜に交わした言葉が胸の中でよみがえる。
楽しい時間はあっという間で、だからこそ一つ一つが大切な思い出になっている。
城壁の門まで歩くと、朝日に照らされた王都の街並みが一望できた。
白い大聖堂の尖塔、丘の上の天空図書館、そして堂々とそびえる王城───。
振り返れば、そこにはエルディナ王国で過ごした日々すべてが詰まっていた。
「ありがとう、エリュシオン。また来ることができたらいいな」
門を抜け、街を後にする。
小鳥のさえずりが響く街道を歩きながら、私たちは次なる目的地へと足を進めた。
こうして、王都での観光の旅路は幕を閉じ、新たな冒険へと続いていく。




