王都での最後の夜
エルディナ王国での観光を存分に楽しんだ私たちは、宿に戻ってきた。
柔らかなランプの灯りに包まれた部屋は、旅の疲れを癒してくれるように温かい。
窓から見える王都の街並みは、夜風に揺れる灯りでまるで宝石の海のようだった。
昼間の賑わいが落ち着き、心地よい静けさが広がっている。
「……明日には、ここを発つんだね」
誰かがぽつりと呟いた。
「うん。短い滞在だったけど、本当に充実してたな」
「図書館も、大聖堂も、王城も……どこも忘れられない景色だった」
テーブルにはナイトマーケットで買ったワインと果実菓子が並んでいる。
グラスを軽く合わせて乾杯し、みんなで旅の思い出を語り合った。
「俺はやっぱり、夜の市が一番楽しかったな。あの大道芸はすごかった!」
「私は天空図書館。あんなに多くの本を見たのは初めてで、胸が躍ったわ」
「私は……大聖堂かな。あの光の差し込む空間は、心が洗われるようだった」
それぞれの思い出を語りながら、笑い合う。
何も事件は起こらず、ただ安心して、仲間たちと共に過ごす時間。
その穏やかさが、何よりも幸せだった。
やがて夜も更け、みんなが眠りについたあと。
私はひとり、窓辺に腰を下ろして、遠くに見える王城の尖塔を見上げた。
「ありがとう、エルディナ王国……またいつか戻ってこれますように」
静かな祈りを胸に、私は目を閉じた。
こうして、王都での最後の夜は幕を閉じたのだった。




