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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第24章 異国観光 エルディナ王国編

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王都観光

城下町を出てから数日後、私たちはエルディナ王国の中心都市──王都エリュシオンへと足を踏み入れた。


高くそびえる城壁は白亜の石で作られ、陽光を受けてきらめいている。街の門をくぐれば、そこはまさに活気と文化の中心だった。


「すごい……! 建物の作りも街並みも、今までの国と全然違う」

思わず感嘆の声が漏れる。石畳の広い大通りの両 脇には、色とりどりの布を張った露店が並び、人々の笑い声や呼び込みの声が絶えない。


エルディナ王国は“芸術と学問の国”と呼ばれており、街の随所に大理石の彫刻や噴水が飾られている。


通りを歩けば楽器の音色が響き、広場では劇団が即興の演劇を披露していた。


「ここが……エリュシオンの中央広場か。王国最大の市も、ここで開かれるんだよね」

仲間が地図を広げて説明する。


王都観光の見どころは大きく三つあった。



天空図書館:学者や魔術師が集う知識の殿堂。世界中の書物や古代文献が保管されている。


光華大聖堂:国民が信仰する“黎明の女神”を祀る大聖堂。白い尖塔が空を突き抜けるように建っていた。


王城エルディナス:王族が住まう壮麗な城。観光客には一部が開放され、玉座の間を遠くから見学することもできる。



「さて、まずはどこに行こうか?」

王都の地図を手に、私たちは顔を見合わせた。


学者肌の仲間は図書館に行きたそうにしているし、信仰心の篤い仲間は大聖堂を見たいと目を輝かせている。私は……城の中を歩いてみたい。



***



「じゃあ、まずは天空図書館に行ってみない?」

そう提案すると、学者肌の仲間が嬉しそうに目を輝かせた。


王都の中央区を抜けた先、丘の上に建つ大きな建物が見えてきた。


空に向かって伸びる塔をいくつも備え、外壁には古代文字が刻まれている。


それが──天空図書館。


扉をくぐれば、思わず息を呑んだ。


天井まで届く巨大な本棚が何列も並び、光を受けて淡く輝く魔道灯が静かな空気を照らしている。


どこからともなく漂ってくる古書の香りが、心を落ち着けた。


「わぁ……! 本当に“知識の海”だね」

「気になる書物を読んでもいいのかしら?」


館員に案内され、閲覧室に通される。


仲間は夢中で魔術に関する本を読み漁り、私は異国の地図や歴史の書を手に取った。


やがて外に出ると、図書館の丘からは王都全体が一望できた。


大聖堂の白い尖塔、王城の堂々たる姿、そして人々で賑わう広場。


「これぞエルディナ王国の中心」という光景に、自然と笑みがこぼれる。


次に向かったのは──光華大聖堂。


白大理石で作られた荘厳な建築、虹色のステンドグラス、静謐な祈りの声。


仲間は手を組んで祈りを捧げ、私はその光景をそっと見守った。


聖堂の中に差し込む光が、心を浄化していくようだった。


最後に訪れたのは王城エルディナス。


観光客に開放されているのは正門と庭園、そして玉座の間の一部。


黄金の装飾に彩られた大広間を歩くと、まるで自分たちが物語の登場人物になったような錯覚すら覚える。


「こうして見ると、旅もずいぶん遠くまで来たんだな」


「うん。いろんな国を巡って、でもここは特別だよね」


夕暮れ時。王城の高台から見下ろす王都は、まるで宝石箱のように輝いていた。


何も事件は起きず、ただ穏やかに、心に残る一日が過ぎていったのだった。



***



王城の庭園をあとにした私たちは、日が暮れる前にもうひとつの楽しみ──**夜のナイトマーケット**へ足を運んだ。


大通りは昼間よりもさらに賑わい、灯りに照らされた屋台がずらりと並んでいる。


香ばしい肉の串焼き、甘い蜜菓子、異国風の香辛料を効かせた料理。


どの屋台からも食欲をそそる香りが漂い、思わず足を止めてしまう。


「これ、美味しそう! 一つ買ってみない?」


「おう、俺はあっちの果実酒にしようかな」


仲間たちと手分けして買った料理を持ち寄り、広場の石段に腰を下ろす。


分け合いながら食べると、不思議とどれも格別な味に感じた。


楽団の奏でる音楽や、火を使った大道芸が夜空を彩り、祭りのような雰囲気に心が弾む。


「こうして旅先でみんなと笑って過ごせるのが、一番の幸せかもしれないね」


「うん。どんな景色より、この時間が宝物になるんだと思う」


やがて夜も更け、王都の街並みは星空とともに静かにきらめき始める。


宿へ帰る道すがら、私たちは何度も振り返っては、その光景を目に焼き付けた。


───エルディナ王国で過ごした観光の日々は、心に温かく刻まれる、忘れられない思い出となった。

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