表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第2章 ダンジョン攻略編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/262

攻略

会議の翌日、私たちは無事に第3階層まで到達した。


「下に来るにつれて、敵も強くなってくるな」


剣を手に周囲を警戒しながら、私は仲間に声をかける。


「油断すると罠にハマるよ」


そんな忠告が終わらないうちに、前方からガラガラと骨の擦れる音が響いた。

暗がりの中から現れたのは、一体のスケルトン。


「……スケルトンか」


今までのモンスターよりは強敵だ。

だが、私たちには連携がある。

私が前衛を取り、ティナが索敵とサポートに回り、エミリとユリアが後衛から援護射撃を加える。


短い戦闘の末、スケルトンは音もなく崩れ落ちた。


「ナイス連携!」

「この調子で進もう!」


和やかな空気の中、ふとエミリが壁際に手を伸ばした。


「ねぇ、このボタンなに?」


それは明らかに場違いな鉄製のスイッチだった。ダンジョンの装飾からも浮いており、見るからに怪しい。


「それは……押さないで放置しようね! 押すと良くない気が――」


「押すなと言われると、押したくなりますよね」


私が言い切るより早く、ユリアが満面の笑みでボタンを押してしまった。


「ちょっ、ちょっと待ってユリア様ぁああ!」


その瞬間、足元に魔法陣のような文様が浮かび上がる。


「まさか……転移トラップ!?」


逃げようにも、光の奔流は私たちの体を包み込む。


「私から離れないで!」


叫んだ声が届いたかも分からないまま、視界が白く染まっていく――。



* * *


気がつくと、私たちは別の空間に転移していた。


「……ここは?」


天井は高く、空気が冷たく湿っている。周囲は静まり返っており、魔物の気配すら感じられない。不気味なほどに、静かだ。


「マップを確認してみましょうか」


ティナが魔導端末を操作し、小さな声で呟いた。


「……8階層、と表示されてます」


「はあ!? 未到達区域じゃないの!?」


「そうね……とりあえず、下を目指しましょう」


「上に戻るんじゃなくて?」


ユリアが眉をひそめる。


「8階層に飛ばされたってことは、ここが深層近くの中継点かもしれない。上層への道が塞がれてる可能性も高いわ。なら、いっそ下を目指す方が脱出できる確率は高い」


「……わかりました。ベテランであるサティさんの指示に従います」


私たちは階層の奥へと進んでいく。そして、やがてひときわ巨大な扉に行き着いた。


「これは……ボス戦の匂いがするわね」


私は剣を握り直し、扉を押し開けた。


部屋の奥には、王冠を被った巨大なスケルトン――《スケルトンキング》が待ち構えていた。


「すごい……殺気」


「皆、気をつけて!」


「次に進むために――倒させてもらうわよ!」


私は素早く回り込み、スケルトンキングの首筋を狙って剣を振るう。


「やっぱり、避けるわよね……」


スケルトンキングの反応速度は速く、手強い相手だ。


「君たちはそこで待機!」


後衛に向かって叫ぶ。こんな未到達の危険区域、無理をさせるわけにはいかない。


「でも、私たちも戦います!」


「あなたたちでは、今はまだレベル不足よ。無茶はしてもいい。でも無理はしないで」


「……分かりました」


それが、懸命な判断だ。私は一瞬の隙を突いてスケルトンキングの背後へと回り込んだ。


「――終わりにしましょう」


首筋を狙い、力の限り剣を振り下ろす。

白い骨が弾け飛び、スケルトンキングは静かに崩れ落ちた。


扉が、自動的に開かれる。


「これで……終わり?」


しかし、そうではなかった。


奥の部屋には、一人の女性が佇んでいた。


赤と白を基調にした服を纏い、20代前半と見える整った顔立ちの女性。だが、その瞳は底知れぬ光を湛えている。


「おや? こんな所に人間が来るなんて、珍しいわね」


「誰……?」


「七つの美徳が一柱――《純潔》担当、マリサ・クラーネットと申します」


その名に、全員が息を飲む。


「なんで……“美徳”がこんな場所に?」


「気づいたら、ここにいたんです。不思議ですね」


「……あなたに恨みはないけど、倒させてもらうわ」


「ふふ、やれるものなら……やってみてください」


張り詰めた空気。

血のように赤い魔力が、彼女の指先に集まる。

静かに――だが、確実に。

ダンジョン、真の戦いが幕を開ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ