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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第23章 謙虚の継承者・セリーヌ編

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謙虚への試練・直前

 旅の道中、空は鈍い灰色に覆われていた。


 街道を行き交う旅人たちの声は小さく、どこかよそよそしい。


 サティは馬の手綱を引きながら、胸の奥に広がるざわめきを振り払おうとした。


「……妙に静かだな」


 隣を歩くルリが周囲を見回す。


 その視線は鋭いが、何かを探すというよりは、何かに備えているようだった。


「静かすぎる。こういう時は、何かが近い」


 サティは頷くが、その言葉の意味を深く考える暇はなかった。


 道端で、老女が荷車を押しながら立ち止まり、サティを見つめていたのだ。


 皺だらけの手が震え、かすれた声が彼女を呼び止める。


「……あなた、耳を持つかい?」


 意味の分からない問いだった。


 だが老女の眼差しは真剣で、サティは思わず歩を止める。


「耳……?」


「自分の声ばかりじゃない、他人の声を……深く、最後まで聞き届ける耳のことだよ」


 サティは返す言葉を見つけられなかった。


 老女は何も言わず、ただ微笑んで荷車を押し、霧の向こうに消えていった。


 その瞬間、足元の土が微かに震える。


 遠くで雷鳴が響き、空気がひやりと冷たくなる。


 背後から、クラウディアの低い声が届いた。


「……サティ。次に来るのは、走っても逃げられないわよ」


 彼女の表情はいつになく硬い。


 サティは無意識に息を呑んだ。

 ───何かが始まろうとしている。

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