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勤勉の街へ
朝霧の中、サティたちは重い荷物を背負い、ゆっくりと歩を進めていた。
南方に広がる交易都市〈カザルス〉は、今日の終着点。
「見えてきたわね……あの高い塔が目印よ」
ルリが指差す先には、空に伸びる巨大な時計塔が輝いていた。
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「カザルスは魔道と学術の中心地。勤勉と知識がこの街の血潮と言われている」
サティが地図を見ながら語る。
「うん、やっぱり少し緊張するな」
ミネルバが少し笑った。
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石畳の街路に足を踏み入れると、白衣姿や研究着を着た人々が忙しげに行き交っている。
空には魔導機械が飛び交い、さまざまな研究道具を運んでいた。
「さすが知識の街ね。活気があるけど、どこか厳かな空気もある」
サティが息を呑む。
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「次に会うのは、《勤勉》の継承者だ」
サティは胸元の紋章に手を添えた。
「どんな試練が待っているのかしら……」
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静かに、そして確かな一歩を踏み出した。




