作戦会議
ダンジョン探索から二日が経ち、私たちは再びギルドの一角で顔を揃えていた。朝早くにもかかわらず皆の表情は明るく、今日という日を心待ちにしていたのがよく分かる。
「さて、これから潜るわけだけど、今日の目標……どこまでにする?」
私はいつものように、メンバー全員に問いかけた。
「今日は確か、第2階層まで行く予定でしたよね?」
エミリが弓を背に、真面目な顔で尋ねる。
「うん。基本はそのつもりだけど……」
「わたしは、行けるとこまで進みたいかな」
と、エミリがすぐに付け加える。探索というよりも、より深く――攻略を望む眼差しだった。
すると隣にいた“妹”のユリア、つまりユーリシア様がそっと口を開く。
「前回のように探索目的なら、1階層ずつでもいいとは思いますが……私たちの目標はダンジョンの《攻略》です。だから、私はエミリの意見に賛成です」
普段は口数の少ない彼女が自ら意見を述べるのは珍しいことだった。きっと、王族として、誰よりも前へ進むという意思が強いのだろう。
「分かった。まずは第2階層をきちんと攻略して、行けそうなら第3階層へ。無理はしないこと。体力と相談しながらね」
「「分かりました!」」
気合いの入った返事がギルドの中に響く。みんなの士気は高い。何より、仲間としての結束が、わずか数日で確かに強まっていた。
だが――。
このときの私はまだ、知る由もなかった。
このダンジョンに、私たちを待ち受ける「罠」が仕掛けられていることを。
深く、静かに。
私たちはその罠へ、確実に足を踏み入れようとしていたのだ――。




