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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第21章 忍耐の兆し編

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大地を旅する者たち ― 節目と始まりの狭間で

 夜の焚き火が静かに揺れていた。


 星が降るように瞬く空の下、サティたちは静かに体を休めていた。


 瘴気に呑まれかけた少女・エルナは、まだ深く眠っている。


 ミネルバが言うには、完全な瘴気の同化ではなく、“誰かの意思”によって引き起こされた一時的な暴走だったらしい。


「人工的な影の生成……だとすれば」

 ルリが言葉を飲む。


「黒幕がいるってことよね」

 ミネルバも頷く。



***


 サティは焚き火を見つめたまま、小さく呟いた。


 「……200日目、か」


 「ん?」

ルリが振り返る。


「この旅に出てから、今日でちょうど200日目。だからなんとなく……」


「そういえばそんなに経ってるのね」


「正直、もっと昔から旅してる気がするわよ」

ミネルバが苦笑する。



***


 ── 旅のはじまり。

 影の核との戦い。

 封印された《大罪》との対峙。

 そして、《美徳》たちとの出会い。


 あまりにも濃密な日々だった。



***


 サティは思い返す。


 《憤怒》《傲慢》《暴食》《怠惰》《虚飾》《憂鬱》《嫉妬》《強欲》《色欲》

 すべての“大罪”を手に入れたその代償に、彼女の中には確かな“歪み”も存在する。


 けれど――


 《勤勉》と《純潔》、《忍耐》が、その歪みを支えてくれている。


 (そして次に向き合うべきは――)



***


 「サティ。次の目的地、決まってる?」

 ルリが問いかける。


 サティは頷いた。


「《勤勉》を覚醒させるために継承者に会う。それが、次の目標」


「となると……やっぱり〈カザルス〉か」


「知識と労働の街。少し騒がしいけど、情報は集まりやすいわね」

ミネルバが口元に笑みを浮かべる。



***


 そのとき、焚き火の奥───

 誰にも見えぬ影が、月光の中で静かに一度だけ頷いた。


 クラウディア。


 忍耐の継承者は、その目でサティの成長を見届け続けている。

 言葉も、気配も残さずに。



***


 エルナが小さく寝返りを打つ。


 サティはその髪をそっと撫でた。


 「もう、あなたを“捨てられた影”なんて呼ばせない」



***


 そして、朝が来る。


 旅は続く。

 大地を踏みしめながら───サティたちは、次なる試練へと歩き出す。

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