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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第21章 忍耐の兆し編

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再び歩む道

 修道都市〈アシュレーン〉を後にし、サティたちは再び旅の道へと足を踏み出した。


 霧がかかる山道を抜け、谷間の村へと続く石畳の道をゆっくりと進む。


 「静かなところだったな、あの都市」

 ルリがぽつりと呟く。


 「沈黙がすべてを支配していたわね。息をすることすらためらうくらいに」

 

ミネルバも小さく笑う。



***


 サティは胸元の紋章───《忍耐》の印に触れた。

 心に残るのは、クラウディアの厳しくもあたたかい瞳。


 (あの人はもう、いない……そう見せているだけ)


 確信があった。

 クラウディアは、表立っては現れない。

 けれど、きっとどこかで見守ってくれている。その強い気配を、サティは感じていた。



***


「……で、次の目的地は決まってるの?」

ルリが尋ねる。


「うん。いったん南の交易都市〈カザルス〉に寄るつもり」

サティが答える。


「《勤勉》の美徳と、いずれ向き合うためにもね」


 「カザルスか……知識と労働の街、だったかな」 ミネルバが少しだけ顔をしかめた。


「賑やかすぎて、わたしにはあまり向かないけど」



***


 そのとき───


 風の流れが変わった。


 遠く、谷底から黒い影が這い上がってくるような気配。


「サティ……来る」ルリが剣に手を添える。


「瘴気。……でもこれは、核ではない」

ミネルバの声が鋭くなる。


「“瘴気を吸い集めた器”のような……まさか」



***


 谷の先から姿を現したのは、歪んだ魔獣でも影の核でもなかった。


 一人の少女だった。


 だがその身から放たれる黒い気流は、まるで瘴気そのもの。


「……あなたが、大罪の力を持つ者?」


 サティたちを見据えるその瞳は、正気と狂気の狭間に揺れていた。



***


「誰?」サティが問いかける。


 少女はただ――にやりと笑った。


「呼び方は何でもいいわ。けれど……私が探していた“対”は、きっとあなた」


 次の戦いの幕が、音もなく上がった───。

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