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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第21章 忍耐の兆し編

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揺るがぬ意志

 対峙していた。


 かつての“自分”───暴走寸前の影を抱えた、最も危うかった頃のサティと。


 怒り、悲しみ、虚しさ、諦め───すべてがこの影の中に宿っていた。


「私を壊すのは、いつだって私自身だった」


 影のサティは何も語らない。ただ、静かに睨み返す。


 その沈黙は、かえってサティの心を抉ってくる。



***


 時間だけが、ただ淡々と流れていく。


 戦えない。逃げられない。叫ぶことも、走ることもできない。


 “耐え続ける”ことだけが、この場で唯一許された行動。



***


 (……怖い。壊れてしまいそうになる)


 (けど、それでも)


 サティは拳を握る。


 (今の私はもう、ひとりじゃない)


 ルリがいて、ミネルバがいて、クラウディアがこの試練を見届けている。


 (そして何より、私自身が、もう逃げないと決めた)



***


 やがて影が動いた。


 サティの目の前に立ち、その手をすっと差し出してくる。


 その意味を、サティは悟った。


 ──逃げるのではなく、否定するのでもなく。

 受け入れること。



***


 「そうね……。あなたも、私なのよね」


 サティは静かに、その手を取った。


 次の瞬間、影は柔らかな光に変わり、サティの中へと溶けていく。


 苦しみも怒りもすべてが昇華されていく───まるで、美徳に変わっていくように。



***


 封印空間の石床がゆっくりと開かれ、光の柱が差し込んだ。


 クラウディアの声が響く。


「試練、完遂」


「あなたの中には、既に《忍耐》が根づいていた。私の役目は、それを証明することだったのです」



***


 サティが歩み出ると、クラウディアはそっと額に手をかざす。


 次の瞬間、淡い光の紋章が、サティの胸に刻まれた。


 それは、確かに《忍耐》を継ぐ者の証だった。



***


「ありがとう、クラウディア」


 サティは微笑みながら、そう呟いた。


 静かな力が、確かに彼女の中で根を張っていた。

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