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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第21章 忍耐の兆し編

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静謐なる時の牢獄

 大聖堂の奥、光も音も届かぬ封印の間へとサティは案内された。


 クラウディアは何も語らず、ただ静かにその扉を開ける。


「この試練は、誰かと戦うものではありません」

 クラウディアの声が、重く、しかし優しく響いた。


「あなた自身が、“時間”とどう向き合うか。それが《忍耐》の本質です」



***


 扉が閉じられると、そこはまさに“何も起きない空間”だった。

 敵もいなければ、罠もない。道もなければ、出口もない。


 ただ、時だけが流れていた。



***


 (……これは、精神を削る試練ね)


 怠惰を会得したサティだからこそ分かる─“何もない時間”の恐ろしさを。


 逃げることも、誤魔化すこともできない。

 力を使う理由すら与えられない。


 (動くな、焦るな。私は……耐える)



***


 サティは目を閉じ、静かに座る。

 記憶の中の声が、微かに蘇る。


 《力とは、感情であり、意思である》


 (私が会得してきた《大罪》は、すべて強い“衝動”だった)

 (でも、“耐える”ことだけは、衝動では得られない)



***


 どれほどの時が経ったのか、もうわからない。

 だがそのとき──空間に小さな振動が走った。


「……来た、か」


 白い影が現れる。

 それは、過去のサティ自身─暴走寸前の、かつて“影”と呼ばれかけた姿。


「お前が私を、試すというの?」


 白い影は何も答えず、ただ静かに近づいてくる。


 否──“怒り”も“怠惰”も“傲慢”も、すべてを纏った“自分”そのものだ。



***


 「いいわ。なら私は、“ここ”に立ち続ける」


 恐れず、拒まず、ただ“その自分”を見つめ続ける。


 それこそが、《忍耐》の証なのだと信じて。



***


 外の大聖堂で、クラウディアは目を伏せて呟いた。


「サティ・フライデー……あなたが真に“耐えられる者”か。見届けさせてもらいます」

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