灰の修道都市へ
数日後、サティたちは“灰の修道都市〈アシュレーン〉”の門前に立っていた。
そこは、山岳に囲まれた静かな都市――かつて魔法と祈りの学び舎として栄え、今もなお厳格な戒律と沈黙の中に息づいている場所だった。
「空気が張りつめてる……ここ、本当に旅人が歓迎される場所なの?」
ルリが小さく首を傾げた。
「外の者を招くことは少ない。ただ、“試練”を求める者だけは別」
ミネルバが静かに答える。
「そして私は、それを受けに来た」
サティが一歩、門へと進んだ。
***
門前に立つ修道騎士が彼女たちを見据える。
「ここは沈黙と節制の街。罪を背負う者が立ち入るには、相応の覚悟が必要だ」
その言葉に、サティは迷いなく答える。
「私は《大罪》を会得し、《純潔》を学び、《大罪》と共に歩んできた。……だからこそ、七つの美徳がーつ《忍耐》を求めてここに来た」
「……ならば、導かれるだろう」
***
灰色の街並みの先、静謐な鐘の音が響く大聖堂へとたどり着く。
サティたちを迎えたのは、静かな瞳の女性だった。
「ようこそ、灰の都市へ」
その声は凛としていながら、深い静けさと試練を思わせる重みがある。
「私はクラウディア。《忍耐》を継ぐ者です」
***
「……《忍耐》の美徳を司る者……」サティは、まるで運命のような出会いに息をのむ。
クラウディアの手には、一冊の分厚い祈祷書と封じられた腕輪。
「あなたは“怠惰”を力として選び、進んできた。ならば、“耐え続ける意味”を知る資格がある」
「あなたに与えるのは、時間そのものを試す試練です」
***
試練の鐘が静かに鳴り始めた──。
沈黙の都市で、サティの“耐え”が試される。




