サティの試練
ミネルバの寛容の試練を終えた翌日、サティは一人で遺跡のさらに奥深くへと歩みを進めていた。
「私の試練は、ここからだ」
遺跡の壁には古代文字でこう刻まれていた。
「真実の鏡を見よ。己の内なる大罪と美徳、そして影を知れ」
サティは深呼吸をし、ゆっくりと祭壇の前に立った。
***
突然、目の前に大きな鏡が現れた。
その鏡に映るのは、これまでの自分の姿だった。
だが次第に、鏡の中の自分は様々な表情を見せる。
憤怒、怠惰、暴食、嫉妬……そして微かな寛容や忍耐の光。
***
「私は何を恐れているのか……何を赦せないのか……」
鏡の中の自分と対話するように、サティは自問自答を続けた。
影が周囲に忍び寄る。
「影よ……私は逃げない」
サティは拳を握りしめ、鏡の中の影に立ち向かう決意を示した。
***
試練は、サティが自らの闇を受け入れ、赦すための戦いだった。
影は容赦なく攻撃を仕掛けてくるが、サティは怠惰や暴食の囁きに惑わされずに耐え続けた。
***
やがて鏡の中に輝く光が生まれ、影は溶けていく。
「私の力は、大罪も美徳も、すべてを受け入れることで強くなる」
サティは胸に新たな紋章が輝くのを感じた。
***
遺跡の外で待っていたルリとミネルバが、サティを迎え入れる。
「おかえり、サティ」ルリの優しい声。
「よく耐え抜いたわね」ミネルバが微笑む。
***
これでサティはまた一歩、真の強さへと近づいたのだった。
***
ヴァローナ渓谷の試練を乗り越えた後、ミネルバは静かにサティたちの前に立っていた。
「これからは、私もあなたたちと共に歩ませていただきます」
その声には揺るぎない決意が宿っていた。
ルリが微笑みながら答えた。
「ようこそ、仲間として」
ミネルバは軽やかに微笑み返し、持ち歩く鎖鎌を静かに振るった。
「戦いだけでなく、旅路の守り手としても力を尽くしましょう」
***
その後の旅路では、ミネルバの存在が大きく光った。
敵の攻撃を巧みに受け流し、攻撃の流れを変えながらサティとルリを守る。
また、ミネルバの冷静な判断が何度もピンチを回避させ、三人の信頼は日に日に深まっていった。
***
ある夜、焚火の前で三人は語り合った。
「寛容とは、ただ許すことではない」
ミネルバが静かに言った。
「相手の欠点も、弱さも、そして自分の闇も抱きしめ、そこから共に歩むこと」
サティは自分の胸に手を当て、思いを巡らせる。
「私たちはまだ、赦しきれていないものが多い」
ルリも頷きながら言った。
「でも、こうして仲間がいれば、少しずつ前に進める」
***
その夜空には、星が静かに輝いていた。
彼女たちの旅はまだ続く。




