ミネルバ、風の如く
ヴァローナ渓谷の霧が晴れた頃、サティとルリは古代の遺跡の前に立っていた。
「ここが、次の目的地……寛容の試練の場所ね」サティが言う。
遺跡の入口には、静かな風が吹き抜ける。
突然、背後から柔らかな声が響いた。
「初めまして、サティ・フライデーさん。あなたが、忍耐を超えた旅人か」
振り返ると、そこには長い銀髪を風になびかせ、優雅な佇まいの女性が立っていた。
その姿はまるで、風そのもののように軽やかで、しかし芯の強さを感じさせた。
「私はミネルバ。寛容の美徳を司る者です」
サティは一瞬緊張したが、すぐに礼儀正しく頭を下げた。
「お会いできて光栄です。私たちは、まだ学びの途中ですが、どうかご指導を」
ミネルバは微笑みながら、手にした鎖鎌を軽く回した。
「戦いにおいても、寛容は力です。敵の攻撃を受け入れ、逆に力へと変えるのです。さあ、私の試練を受けてみなさい」
遺跡の闇の中から、影のような敵が現れた。
ミネルバは静かに構え、流れるように鎖鎌を振るった。
敵の攻撃を一度も跳ね返すことなく、受け止めて流し、逆に敵を翻弄する。
「寛容は受け入れること、でも決して弱さではない」
その戦い方はまるで風の舞いのようで、見る者を惹きつけた。
サティもまた、静かに闘志を燃やした。
「私も……もっと強くなりたい」




