忍耐の証
試練の終わりに、サティは光の中に立っていた。
老人が微笑み、手を差し伸べる。
「よく耐え抜いた。これが、忍耐の証だ」
サティの胸には、淡い光を放つ紋章が浮かび上がった。
「これで、あなたの力はまた一歩進む」
サティは深く息を吸い込み、未来を見据えた。
「私の旅はまだ続く。大罪も美徳も、すべてを抱えて」
***
ヴァローナ渓谷の奥深くで忍耐の証を得たサティとルリは、静かな森の小径を歩き続けていた。
「紋章が光ると、力が少しずつ変わっていくのを感じる」
サティは自分の左手に浮かんだ、淡い青い紋章を見つめた。
「それはきっと、《忍耐》があなたの中で根付き始めた証よ」
ルリは優しく微笑んだ。
しかし、その時、不意に周囲の空気が変わった。
「……気をつけて」
サティの言葉に、ルリも身構えた。
木々の陰から、黒い影が静かに忍び寄ってくる。
「また“影”……?」
二人は構えたが、影は一瞬だけ姿を見せてすぐに消えた。
「油断できないわね……」
サティはひとつ深呼吸をして、自分の心の奥に意識を向けた。
(怠惰が、まだ私の中にいる。だまされてはいけない)
その時、心の中でかすかな声が聞こえた。
《お前は弱い。待つだけで何が変わる?》
怠惰の声が囁く。
サティは握った拳を強くした。
「違う。私は待つだけじゃない。立ち上がることも、歩み続けることも選ぶ」
ルリも力強くうなずいた。
「私たち、ずっと一緒だよ」
その言葉に、サティの心は少しずつ揺るぎなくなっていった。




