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古の守護者と暴走の淵
ヴァローナ渓谷の入り口、深い霧が立ち込める中、サティとルリは慎重に足を進めていた。
「この霧、ただの自然現象じゃない気がする……」 ルリが囁く。
「警戒は怠らないで」サティは握った拳を見つめる。
《怠惰》の力がまた、暴走の兆しを見せ始めていたのだ。
突然、前方から轟音が響き、岩陰から巨大な石像が目を覚ました。
それは古の守護者、かつて怠惰に呑まれた者たちを封じるために造られた者だ。
サティは咄嗟にスキルを呼び起こすが、胸の中で《怠惰》がもぞもぞと暴れ始める。
「危ない……自分を失いそう」
ルリはすぐに駆け寄り、優しく手を取った。
「サティ、私がいる。あなたは一人じゃない」
二人の絆が強く結ばれる瞬間、サティの内の《怠惰》は静かに沈黙した。
守護者を倒したあと、サティは決意を新たにする。
「忍耐は“待つこと”だけじゃない。自分と戦い続けること」
霧が晴れ、二人は谷の奥へと歩を進めた。




