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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第21章 忍耐の兆し編

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座り続ける男

 村の外れの古い橋のそばで、サティとルリは一人の男と出会った。


 男はうつむき、ずっと橋の欄干に寄りかかって座り続けている。


「……何をしているのだろう?」


 ルリが不思議そうに声をかけると、男はゆっくり顔を上げた。


 その目はどこか遠くを見ているようで、疲れきっていた。


「私は、ここでずっと座っている」


 その言葉に、サティは眉をひそめた。


「なぜ?」


 男は苦笑し、答えた。


「待っているのだ。誰かが、迎えに来るのを」


 ルリが首をかしげる。


「でも、それは───長くない?」


 男は静かに頷いた。


「そうだ。何年もだ。けれど、それでも待つことをやめられない」


 サティはふと、心の奥がざわつくのを感じた。


 (これが、《忍耐》の一端……なのかもしれない)


 男の話を聞くうちに、サティの内側にある《怠惰》が、揺れ動きはじめる。


「力を制御することは難しい。

  時に、力に負けてしまいそうになる。そういう時は……待つことしかできない」


 男の言葉が、サティの胸に響いた。


「あなたは、何を待っているのですか?」


 サティの問いに、男は少し間を置いて答えた。


「赦しを。自分自身からの赦しを」


 その答えに、サティは言葉を失った。


 しばらく沈黙が続き、やがて男は立ち上がった。


「では、失礼する。あなたたちも、良い旅を」


 そう言って男は歩き去った。


 その背中を見送る二人。


「待つこと。忍耐……簡単そうに思えて、すごく重い」


 ルリがつぶやく。


「そうね。でも、これから私が学ばなきゃいけないこと」


 サティはそう言って、再び歩き出した。


 ──忍耐とは、“ただ座り続けること”だけではない。

 “自分自身と向き合い、赦し、歩み続けること”なのだと。

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