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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第21章 忍耐の兆し編

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導きの地図

 サティは、写本を手にしたまま、小高い丘に立っていた。


 ルリはその横で、陽の傾きを眺めている。


「次の目的地……決まってる?」


「ええ。エルナが残してくれた記録によると、“忍耐”の記憶は───」


 サティは写本を開き、特定のページに記された地図を見せた。


 その中心には、“ヴァローナ渓谷”という地名が記されていた。


「そこは、かつて怠惰に飲まれた王が、長き眠りから目覚めずに消えた場所。

 《忍耐》は、そこで形を変えて今も残ってるらしい」


 ルリは眉をひそめた。


 「……つまり、また遺跡系?」


 「そうね。でも、今回は少し違う。

 “待つこと”そのものが力になる場所──らしいわ」


 ふたりは丘を下り、小さな村に向けて歩き出す。


 その村から、馬車で東の山脈を越えることができる。


 旅の再出発だ。


 風が吹き、草を揺らす。


 その音の中、ルリがぽつりと呟いた。


「ねぇサティ。あたしたち、いつまでこの旅を続けるんだろうね」


「……まだ、わからない。でも───」


 サティは足を止め、振り返る。


「少なくとも私は、罪を持ったままじゃ終われない。

 それを許すためにも、美徳が必要なの」


「罪を、許す?」


 ルリの声には驚きが混じる。


 サティは頷いた。


「うん。これは、罰じゃなくて、“自分との和解”なの。

 暴食も、怠惰も、私の中にある。消えない。

 でも、美徳を得れば――“罪を抱えたままでも、生きていける”って証明できる」


 ルリは目を伏せ、何かを考えるように歩き出した。


「そっか……そうだよね。……あたしも、ちゃんと傍で見てる」


 ふたりは、夕焼けに染まる道を進んでいく。


 その背中を、風がそっと押していた。


 遠くの空には、ヴァローナ渓谷の山並みが、うっすらと影のように浮かんでいる。

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