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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第20章 神殿の残響編

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書かれざる一節 ― 綴り手は傍に

書かれざる一節 ― 綴り手は傍に


 風がやわらかく吹き抜ける、草原の夜。


 静寂の中、小さな焚き火だけが、淡いオレンジの灯を揺らしていた。


 その傍らに、眠る二つの影。


 ひとつは銀髪の少女、ルリ。もうひとつは、炎の揺らぎの奥、黒衣の少女───サティ。


 そのふたりを囲むように、もうひとつの“気配”が、静かに立っていた。


 フードを深くかぶり、音もなく草を踏みしめる者。


 ───エルナ。


 彼女は、焚き火の端にしゃがみ込み、

 そっと革表紙の古びた書物を開いた。


 書の中には、既に多くの物語が綴られている。


 炎に照らされたインクが、その文字の上を淡く光らせる。


 彼女は、筆を取り、静かに一文を書き記した。


 > “第177章、暴食の影と対話す。選びなおすことを、彼女は知る”


 インクが紙に染みこみ、その一節が“物語”へと変わる。


「……まだ、書くには早いわね」


 エルナは、隣で眠るサティをちらりと見る。


 その表情は穏やかで、けれどどこか苦しそうでもある。


「あなたが背負う物語は、もう書物の範囲を超えている。

  でもそれでも――私は綴る。誰かが、忘れないように」


 エルナは書を閉じ、立ち上がった。


 風が草を揺らし、彼女の姿を包む。


 次の瞬間、その姿は夜の帳に溶け、消えていった。


 そこにいたことを、誰も知らない。


 けれどサティは、微睡の中で、ふと───


「……エルナ……?」


 と、誰にともなく名前をつぶやいた。

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