ダンジョン探索の前日
「ユーリシア様、今日は何をするか予定はありますか?」
共に暮らし始めて、ちょうど一週間。最初はぎこちなくて、何を話せばいいかも分からなかったが、不思議と今では自然に声をかけられるようになった。
「今日はね、ダンジョンに行きたいな」
「ダ、ダンジョンですか……?」
最初は「お菓子が食べたい」とか「猫と遊びたい」といった可愛らしい要望だった。だが最近は、だんだんとスケールが大きくなってきている。
とはいえ、それだけ私という存在を信頼してくれている証でもある。嬉しい反面、なんでも言うことを聞いていいのかどうか、時々迷ってしまう。
「ダメ……ですか?」
そんな小さな声で、上目遣いで見られたら断れるはずがない。
「ダメじゃないですよ! 戦士長に相談してみるので、少し待っててください」
私はすぐにポケットから《ミーティア》を取り出し、戦士長へと通信を繋げた。ちなみに、戦士長と連絡先を交換したのは、1週間前のパーティの席でのことだ。
『どうしましたか?』
通信越しにいつも通り冷静な声が返ってくる。
「ユーリシア様が……ダンジョンに行きたいとおっしゃっていて」
『いいじゃないですか。健全な欲求です』
「それはそうなんですが、私は受付嬢の業務をストップしてますから……ギルドに顔を出すのが少し気まずいというか」
『なるほど。たしかにそれは厄介ですね。……変装するというのは?』
「変装ですか?」
やってできないことはない。ただ、王女にバレるのはまずいし、バレた時の反応がちょっと怖い。
「……即席でパーティを作るのはどうでしょう?」
『いいですね。その案、いただきました。手配しておきましょう』
「ありがとうございます!」
通信を切った私はすぐに、ユーリシア様に明日の準備が整うことを伝えた。
「ほんと? やったー!」
まるで子供のようにはしゃぐ彼女の笑顔に、こちらまで嬉しくなってしまう。
「喜んでもらえて光栄です。明日、安全にダンジョンに潜れるよう準備しておきますね」
その日の夕方、戦士長から《明日、ダンジョンに潜るパーティが整った》と再び連絡が来た。
「ユーリシア様、明日に向けて、今日はゆっくり休みましょう」
「うん。明日が楽しみです」
王女としての日々、そして戦士としての任務。
立場は違えど、同じ目標に向かう日が来る。
その夜、私たちはしばしの休息を楽しみながら、静かに明日を待つのだった。




