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静寂の代償
街を出てから、数日が経った。
夜明け前の冷たい風が、サティの頬を撫でる。
しかし、その体はいつもより重く感じられた。
「……疲れてるのね」
ルリが静かに声をかける。
「うん。大罪を使うたびに、少しずつ“何か”を奪われている気がする」
サティの視線が遠くの空を見つめる。
「力の代償……それが、大罪の本当の怖さかもしれない」
ルリは深く頷きながら言う。
「それでも、あなたは止まらない。だからこそ、私がいるんだ」
二人の間に沈黙が流れる。
そんな時だった。
「見て、あそこ」
ルリの指差す先には、小さな村が見えた。
「異変が起きているかもしれない。行ってみよう」
そう言って、サティは背筋を伸ばした。
まだまだ、終わりじゃない。




