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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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星なき夜の始まり

 太陽が、沈む。


 けれど、空は赤くも紫にも染まらず――ただ、鈍く、重たく沈黙していた。


「サティ……本当に夜まで残るつもりなの?」

 ルリの問いに、サティは頷いた。


 「ええ。影の核が関わっている可能性があるなら、なおさら見過ごせない。……ここで“何が起きているのか”を知る必要があるわ」


 ふたりは街の中央にある宿屋に部屋を取りつつ、窓から外の様子を探っていた。


 日が沈むにつれ、街の様子は明らかに変わり始めていた。


 路地を歩いていた人々が、次々に家に引き返していく。


 店も灯りをともさず、静かに扉を閉ざす。


「……まるで、戒厳令みたいね」

 ルリが言う通りだった。まるで“何か”を避けるかのように、誰もが外を避け、光を隠している。


 そして──


 夜が、落ちた。


 完全な、**“星のない夜”**が。


「……真っ暗」

 サティが小さく呟いた。


 まるで空そのものが塗りつぶされたような、光一つない夜。


 しかし、それは一瞬だけだった。


 ──カツン。


 石畳の路地に、何かが落ちる音が響く。


「……足音?」

 ルリが窓を開けて身を乗り出そうとしたその瞬間、サティが彼女を引き戻した。


「待って」

 視界の先に――いた。


 白いマントのような布をかぶった“何か”が、ゆっくりと街を歩いている。


 顔は見えない。


 だが、それが“人”でないことは直感でわかる。


「ルリ、あれを見て」

 サティが指差した方向には、さっきまで閉じていたはずの扉がひとつ――開いていた。


 そして、中から出てきた少女が、まるで夢遊病者のように白い者に近づいていく。


「……危ない!!」


 ルリが咄嗟に窓から飛び出し、地上へ降り立った。


 サティもすぐに続く。


「離れて! そいつから!!」

 叫ぶルリの声に、少女が一瞬だけ立ち止まる――だが。


 白い者が手を伸ばすと、少女の身体は糸が切れた人形のように、すうっと吸い込まれるようにして“布”の中に消えていった。


 「っ……!」


 その瞬間、サティの目が閃く。


「捕らえるわよ。ルリ、援護して!」


「了解!」


 サティの手から、魔力の鎖が迸る。白い者を包み込むように――だが。


 その布は、何もない空間のように魔力をすり抜けた。


「……効かない?」


 白い者はふたりに目もくれず、再び静かに歩き始めた。


 まるで、定められた順路を辿るかのように。


「こいつ……何者なの?」「ルリ、あの子は……」


 ルリは唇を噛みしめた。


「――いない。完全に、気配が消えてる。魔力の痕跡すら……」


 “星の堕ちた街”。


 この街では、夜になると“何か”が人を連れ去っている。


 影の核とは違う。


 だが、これもまた“記録されざる災厄”──。


 「夜明けまでに、もう一度現れるわ。今度は、捕らえる」


 サティの瞳には、強い光が宿っていた。

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