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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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星の堕ちた街で、夜を待つ

 星の堕ちた街──。


 その名は詩のようでいて、実際には何かを隠すための仮初の呼称のようだった。


 サティとルリがこの地にたどり着いたのは、偶然ではない。かつて空から“何か”が落ちたと記録にある場所。それは、サティたちが追っている影の核とも無関係ではないと睨んでいた。


「空気が……少し重いわね」

 街の中央、噴水の広場に立ったサティは、胸の奥で何かが引っかかるのを感じていた。


「感じる? この違和感」

 ルリもまた、鋭敏な感覚を研ぎ澄ませている。


「見えないけど、何かがある。地脈じゃない、魔力の流れでもない……でも、近い」


 街は一見、静かだった。


 路地を歩く人々もおだやかで、商店も開いている。異様なところはない……ように“見える”。


 だが、よく観察すれば、何かが違う。


 時計塔の鐘が決して鳴らないこと。


 子供たちが外で遊んでいないこと。


 そして何より──誰一人として空を見上げようとしないこと。


「ねえ、ルリ。星が落ちたって話、どこまで本当だと思う?」


「信じたくないけど……“落ちた”ってより、“落とされた”って感じがする」


 そのとき、広場に佇む一人の老人が、サティたちに近づいてきた。


 杖を突き、片目に眼帯をしている。


「旅の娘さんたち……この街に長居をしてはいけないよ。夜が来る前に、出て行きなされ」


 その言葉に、サティの目が細くなる。


 前にも、似た忠告を聞いた気がした。否、これは――「繰り返されている」?


「なぜ、夜を恐れるのですか?」

 サティの問いに、老人は遠くを見つめるような目で答えた。


「星が落ちた夜、この街は“光を忘れた”。その夜を迎えるたびに、誰かが“星に連れていかれる”。」


「……それって、つまり――」

 ルリが言いかけた瞬間、風が吹き、広場の噴水の水面が波紋を描いた。


 水面に映った空には、星がなかった。


 黒く、虚ろな空。


「これは……」

 サティが振り返ると、そこにはもう老人の姿はなかった。


「ルリ、この街……やっぱり、普通じゃない。影の核とも――きっと、つながってる」


 星の堕ちた街。


 失われた空と、見上げることをやめた人々。


 夜は、もうすぐそこまで来ていた。

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