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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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霧の峰を越えて

 ルメリアを出発して三日。


 サティたちは東方へ進路を取り、未踏の地――白砂の谷を目指していた。


 地図に記されていた“霧の峰”が、その行く手を阻む。


 それはまるで、雲を抱いた壁のように大地を切り裂いてそびえ立っていた。


 山肌には霧が立ちこめ、風が渦を巻いて吹き抜けている。


「ここが……霧の峰」


 ルリが眉をひそめた。


「ここを越えないと、“ステラグラフ”には行けないのよね」


 アゼルが淡々と告げる。


「かつて、魔法の嵐によって“方角”そのものが歪められた場所。普通の羅針盤は使えないわ」


 レオが懐から地図を取り出す。


「でもこの写しは“魔導記録式”……光の印が進むべき道を示してる。間違いない」


 サティは一つうなずくと、前を向いた。


「行きましょう。これは、“私たちの旅”なのだから」



***


 霧の峰の登山道に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


 風は常に横から吹き、霧は目の前すら霞ませる。


 足元の石は苔で滑り、道の形さえ信用できない。


 まるで、誰かに“入るな”と拒まれているようだった。


「まるで“意志”があるみたいだな」


 レオが言ったその瞬間だった。


 ──ずるっ


「ミカ、足元!」


 ルリの声が飛ぶ。


 滑ったミカをサティがすぐに支える。


「っ、ありがと……なんか、空間が歪んでる気がする……」


「ここは“重ねられた魔法結界”の中よ」


 アゼルが手を掲げると、指先に淡い光が宿る。


「“銀の鍵”が通るべき道を開く。……見てて」


 すると、霧の中にわずかな光の道が現れた。


 まるで誰かがそこだけ“記憶”していたように、確かな形を持って。



***


 だが、油断はできなかった。


 次の瞬間、霧の中から何かが“這い出た”。


「っ、これは……影!?」


 サティが構えた。


 霧の霊気をまとった“影の残滓”が、獣の形を取り襲いかかってくる。


「“影の核”は壊したのに……まだ、残ってるの!?」


「これは“影の揺り返し”よ。

 核が壊れたことで封じられていた“残り香”が漏れ始めたの」


 アゼルの顔に緊張が走る。


「ステラグラフには、もっと強い“封印された影”が眠っている。……この程度は前兆に過ぎない」


「来るわよ、みんな!」


 サティが前に出た。


 ───銀の魔力が展開され、霧の獣とぶつかり合う。


 レオが補助魔法で展開を支え、ミカとルリが横から攻撃を加えた。


「っ、耐久が高いわね!」


「影獣の核を壊して!」


「任せろ――《穿て、雷槍!》!」


 レオの一撃が影の中心を貫く。


 獣は断末魔のように鳴き、霧に溶けて消えていった。



***


 しばらくして、ようやく霧の峰の頂が見えてきた。


 そこからは、広大な“白砂の谷”が一望できた。


 銀白の砂が風に舞い、地平線まで続いている。


 だが、その最奥。


 ぽっかりと“闇”が開いたように黒い穴が見えた。


「あそこが……“星の墜ちた街”。ステラグラフ」


 サティが呟く。


「かつて、空から“何か”が墜ちた。街ごと封じられ、忘れ去られた場所」


 その先に、まだ誰も知らない真実がある。


 サティは前を向いた。


「行きましょう。すべてを知るために――」

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