星の墜ちた街と、銀の瞳の少女
ルメリアに戻って三日。
街は相変わらず賑やかで、旅人や商人、冒険者たちが行き交う活気に満ちていた。
サティたちは束の間の休息を満喫しつつ、ギルドの情報板や報告書に目を通しながら、次の目的地を探っていた。
「落ち着いたら、また任務に戻るんでしょ?」
ルリが手にした焼き菓子をかじりながら言う。
「ええ。でも、次の依頼は慎重に選ばないと」
そう答えるサティの脳裏には、あの核の最後の光景――
ミリエルの微笑みが、今も残っていた。
そこへ、突然───
「ねぇ、あなたたち、“星の墜ちた街”って知ってる?」
澄んだ声が、すぐ背後から響いた。
振り返ると、そこにいたのは銀髪の少女だった。
年の頃は14、5歳。
薄灰色のローブを羽織り、胸元には何かの紋章が刻まれたペンダント。
「……誰?」
ルリが即座に警戒する。
だが少女は怯えることもなく、サティの瞳をじっと見つめてこう言った。
「“影の核”を壊したの、あなたたちでしょ?」
サティたちの背筋に、緊張が走る。
街中で、それを知っている者はまだいないはずだった。
「どうして……それを?」
「予言にあったの。“白銀の瞳を持つ者が、影を裂き、星の落ちた街へ至る”って」
ミカが小声で囁く。
「……瞳の色、まさか……」
ルリも気づく。
サティの瞳は、光に当たると銀色に輝く。
それは、この世界においてごく限られた血筋にしか現れない色─“星読みの血統”。
「あなた、名前は?」
「……アゼル。アゼル=ネブラ。
『星の墜ちた街』に関係する一族の、生き残りよ」
サティが息を飲む。
その名は古文書にだけ記されていた“滅びた都市”──
星の墜ちた街。
その地は、千年前に空から落ちた“星の欠片”によって消えたとされていた。
伝説のような存在。けれど今、それが現実として目の前に現れようとしている。
「私を、そこまで連れて行って。あなたじゃないと開けない扉があるの」
サティは、一度目を伏せた。
迷い。緊張。予感。そして──強い確信。
「……わかった。行きましょう、“星の墜ちた街”へ」
***
こうして、再び旅は始まる。
新たな目的地、新たな仲間、新たな影─
“第二の旅路編・ステラグラフ探索編”、始動。




